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【ショートショート】筋肉は裏切らない【名探偵ボディビルディング】

   筋肉は裏切らない

 私立探偵・筋肉きんにく盛造もりぞうは、被害者の秘書を「犯人」と言った。自信に溢れた筋肉が輝く盛造を、秘書は鼻で笑った。
「何を根拠に……」
「証人の声を聞いたのさ」
 すると……その声とやらが、全員の耳に届いた。
 ――こんなことに使ってほしくなかった。
 全員が秘書を見た。だが、彼は一言も喋っていない。
「筋肉さ……」
 盛造は牛乳をシェイカーに入れながら答えた。
「筋肉が、泣いているのさ……」
 盛造は更にプロテインを加え、シェイカーをシャカシャカと振り始めた。逃げ場を失った秘書は罪を認める。警察が彼を逮捕する中、助手が盛造に話しかけた。
「お手柄です」
「筋肉は裏切らないからな」
 盛造はプロテインを飲みながら答えた。
「それは嘘だな」
 今まさに警察に連行されそうになっている秘書が、悲しげな顔をする。
「俺が逮捕されているのは、筋肉が裏切ったから……だろ」
「違うね」
 盛造はプロテインを飲み干してから、彼に告げた。
「君が逮捕されているのは、罪を犯したからさ……」


毎週ショートショートnote
お題「名探偵ボディビルディング」
文字数409字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)