【ショートショート】インフレーション【アルプス笑点かい？】

　　　インフレーション

　プロデューサーがこんなことを言い出した。
「笑点の大喜利なんだがね、面白い答えに座布団たった一枚ってのは噺家に失礼じゃないか？」
　新人スタッフは目を白黒させた。座布団は十枚溜めると豪華賞品が貰えるというルール。つまり座布団そのものは指標でしかない。しかし彼に意見する勇気などあるわけもなく、話はトントン拍子に進んでしまった。座布団をもっと高いもの、つまりアルプス山脈級のものにすれば噺家たちの素晴らしさも良く伝わるだろうとして、収録内でもその話が出た。
　司会のU丸さんは顔をしかめて、K楽さんはよく通る声で笑った。そんな中、E楽さんがすかさず手を上げる。
「アルプス笑点かい？」
「はい、そうです」
　新人スタッフは泣きそうな顔で答えた。E楽さんは満員御礼の客席に向かって謎掛けを口にした。
「えー、アルプス笑点と掛けまして、U丸と解く」
「……高い高い（他界他界）か？」
　司会のU丸さんが答えを言うと、客席からはどっと笑いが起きた。

毎週ショートショートnote
裏お題「アルプス笑点かい？」
文字数407字