【ショートショート】自然の理【命乞いする蜘蛛】

　　　自然の理

　一匹の蜘蛛が、小鳥に命乞いをしていた。
「お許しください。腹に子供が居るんです」
　どうやらこの蜘蛛、卵を産もうとしたところを鳥に捕まったようだ。
　小鳥はピピピと声を出して笑った。
「お前、昨日蝶々を食っただろう。そいつも似たようなことを言っていたのを、おれはキチンと聞いていたんだ。命乞いをする蝶々をお前はどうした？」
　蜘蛛は震えた。勿論あの蝶々の命乞いを蜘蛛も聞いていたが、蜘蛛はそれを一蹴して蝶々を食った。まだ羽化したばかりなの、という彼女の懇願ごと食った。
　小鳥は蜘蛛を食った。そして新しい餌を探しに空へ飛んだところ、強い衝撃を食らった。

　……一羽の小鳥が、鷲に命乞いをしていた。
「お許しください。巣に子供が居るんです」
「お前、さっき蜘蛛を食っただろう。そいつも似たようなことを言っていたのを、俺はキチンと聞いていたんだ。命乞いをする蜘蛛をお前はどうした？」
　鷹は答えを聞く間も与えず、鋭い嘴で小鳥の腹を抉った。

　毎週ショートショートnote
　お題「命乞いする蜘蛛」
　文字数408字

　余談
　ヘッダーの素材検索するとき、画面いっぱいに蜘蛛の画像が出てきて死にそうになりました（画面いっぱいに敷き詰められると、あー！　ってなりませんか？）