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【ショートショート】まいりました【呪いの臭み】

   まいりました

 呪いの臭みを嗅ぐと七日以内に死ぬ。N町の都市伝説だ。オカルトライターの私は助手を連れて、調査にやってきていた。
「呪いの臭みが発生する前に、白い女の幽霊が出るらしい」
 私はそう言って、助手と目の前の光景に息を飲む。暗がりに女の姿。顔がこちらを向く。そして、ぼんやりとした面が狂気に歪む。
「くっさ!」
 幽霊はそう言って、鼻をつまんだ。
 私は助手と顔を見合わせた。……覚えがある。せっかくの現地調査。寝る時間すら惜しい。そんな二人が風呂に入るわけがなく、かれこれ五日間風呂に入っていない。
「風呂入れよ!」
 ヒステリックに叫ぶ幽霊の姿が薄くなってきたので、私は慌てて彼女の服の裾を掴んだ。
「ま、待て! 成仏するには」
「お、おえええ、げろげろげろー」
 臭いの元に近づかれ、幽霊はついに吐き出した。幽霊も吐くらしい。
 結局、彼女は成仏した。それ以降、私たちは取材中寝る間を惜しむことはあれど、風呂には入るようになった。


 毎週ショートショートnote
 お題「呪いの臭み」
 文字数404字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)