【ショートショート】パリパリ健康ナンバーワン【聴診器が海苔】

　　　パリパリ健康ナンバーワン

　近所のお医者の聴診器が海苔だった。僕は驚いてしまった。でもお医者は勿論、看護師さんも何も言わない。僕はそういうものなのかな、と思って、大人しくイスに腰掛けた。
　先生は、僕にシャツを捲るよう言った。僕が言われたとおりにすると、先生は僕の胸に聴診器を当てた。海苔が貼り付いてちょっとくすぐったい。
「うん……」
　先生は聴診器を動かしながら、言った。
「パリパリ、パリパリ……いい音がするね」
　海苔だと思う。
「……ん！　こ、これは」
　僕はドキリとした。先生はじっと黙っている。
「ど、どうしたんですか？」
　先生は僕をじっと見つめながら、神妙な様子で告げた。
「……海の匂いがする」
　海苔だと思う。
「いやあ、君はとても健康だ」
　先生はキラキラした目で僕を見て、褒めてくれた。僕は思わず「ありがとうございます」と答えてしまった。先生はにんまり笑いながら、噛み締めるように呟いた。
「真っ黒に焼けていてとてもよい」
　……海苔だと思う。

　毎週ショートショートnote
　お題「聴診器が海苔」
　文字数407字