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【ショートショート】当人はトリセツを知らない【着の身着のままゲーム機】

   当人はトリセツを知らない

 ある家の最新ゲーム機は、本体をすっぽり覆うカバーを自慢していた。本体のカラーバリエーションとは違った、鮮やかな色彩はひときわ目立つ。ゲーム機は自分の仲間たちに、自分がいかに大事にされているかを延々と語り、ゲーム機たちははいはい、と聞き流していた。
「そのカバー、あまりよくないよ」
 先代のゲーム機が忠告を投げるが、最新ゲーム機は聞く耳持たず。
「ゲームは着の身着のままが一番さ」というのも、嫉妬だと思っていた。

 いつものように充電ケーブルに繋がれて、最新ゲーム機はのんびり過ごしていた。だが、部屋に入ってきた持ち主が「わー!」と声をあげるので何事かと思った。次の瞬間、思いっきり毛布を押し付けられる。そこで気が付いた。自分が燃えていることに!
「だから言ったじゃないか」
 先代のゲーム機が呆れた声で言う。
「そんな変なカバーを使ったら、熱がこもって発火の恐れがあるって」
 最新機は返事をしなかった。もうダメだと分かっていた。



 毎週ショートショートnote
 お題「着の身着のままゲーム機」
 文字数410字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)