【ショートショート】実際、旅行は六泊七日【失楽園ぼっち】
実際、旅行は六泊七日
神は頭を悩ませていた。失楽園をアレンジし、アダムとイブを仲良しにさせた結果、肝心の「二人を楽園から追放する」というシーンに重みが感じられなくなってしまったのだ。
「無理に変えなくてもいいんじゃないんですか?」と天使は思ったが、主が懸命に改変しようとしているのなら、応援したいというのが従者心だ。
天使は時に黙して、時に口を出し、神の創作の手伝いをした。
「そして、アダムはこの地上に、イヴは別の地にそれぞれ離されてしまったと」
作家は頷いた。
「そして、彼らを哀れんだ別の神がカモメを遣わせ、二人は七月七日の夜だけ再会できる。これが先生の新作、『失楽園ぼっち』のあらすじですか」
作家は再度頷いたが、担当者は長いため息をついてから、「ゆったり! 青森温泉旅行」と書かれたチケットを作家に差し出した。
「少し休んできた方が良いですよ、先生」
作家は、旅行の初日にリンゴを食べた。
そして、温泉につかって良しとされた。
結局、混ぜる癖は直らない。
毎週ショートショートnote
裏お題「失楽園ぼっち」
文字数410字
気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)