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【ショートショート】おたがいさま【会員制の粉雪】

   おたがいさま

 雪は金持ちの道楽になってしまった。会員制の粉雪は特に人気で、一時間眺めるのにウン百万もかかる。雪遊びをするのではなく、窓の外の粉雪を眺めるのが一番の贅沢なのだ。
「いやあ、良質な粉雪ですな」
「これがあの名曲に歌われた……」
 僕たちの存在に気づかずに、金持ちたちはそんな会話をしている。彼らが覗いている窓の外ではふわふわと粉雪が舞い降りている。金持ちたちはそのままワインを飲み始めた。もう誰も粉雪を見ていない。
「もういいんじゃない?」
「ダメだ。少しでも手を抜いたらオーナーに怒られる」
 僕たちは、金持ちのいる部屋の外で必死にカゴを振るっていた。僕たちの手の動きに合わせて粉が舞い降りる。
「バカみたい」
「なにが?」
「こんな景色を粉雪だっていって喜んでる連中が」
「それを言ったら、その連中のために粉をふるって粉雪を作ってる僕たちもバカだ」
 友人は黙り込んだ。粉雪はまだ降り続いている。僕も友人も、手を止めていないので。


 毎週ショートショートnote
 お題「会員制の粉雪」
 文字数406字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)