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【ショートショート】オーダーメイド【奇岩シューズ】

   オーダーメイド

「どうした」
 迷子がいる。ここは一応観光名所。カップルが写真をインスタにあげるためにやってくる程度には人の往来はある。
「パパがね、おくつかたっぽなくしちゃったの」
 そこで思わず吹き出しそうになった。この坊やじゃなくてパパが靴をなくしたらしい。
「それじゃあ、一緒に探してあげるよ」
 俺は靴の特徴を尋ねようとした。が、子供は顔を輝かせ「あった!」という。奇岩シューズ……まるで靴のように見える岩の方を見ながら。
「ぱぱー! あったよ!」
 子供が叫ぶと、海の向こうから巨体がざぶざぶやって来るのが見えた。何人かが「津波だ!」と言って逃げていく。
 巨体は途中で止まる。子供が頷く。
「このおくつじゃないって」
 そうなのか。
「ちっちゃすぎるって」
 マジかよ。
 デカい脚がざぶざぶ遠のく。俺は子供を見た。
「お前もあのくらいでっかくなるのか?」
「うーん」
 子供は唇を尖らせる。
「ぱぱ、ちっちゃいほうだっていってた」
 ……マジかよ。



 毎週ショートショートnote
 お題「奇岩シューズ」
 文字数406字


気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)