【ショートショート】圧縮童話【無理無理童話８８】

　　圧縮童話

　桃太郎、シンデレラ、白雪姫などなどの名作絵本が山になっている。どうやらこの幼稚園、本の読み聞かせをサボっていたらしい。
「今日中にこれらを読み聞かせないとなりません！」
　絵本は全部で八十八冊。一気に全部読み聞かせたとしても園児の集中力が持たない。つまり子供たちの集中力を保ったまま八十八冊分の体験をさせる必要がある。
　ヤケクソになった先生が絵本を構えた。

　読み聞かせが始まる。
「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました」
　子供たちは目を輝かせて、じっと聞き入っている。
「おじいさんは竜宮城での暮らしを思い出しながら芝刈りに、おばあさんは遠くに住むシンデレラのためにカボチャを馬車に変える魔法を準備したり、川へ洗濯に行ったりしました。おばあさんは川で洗濯をしているときに流れてきた桃を持ち帰り、そのまま眠りました。すると鍵の開いた窓から狼がやってきておばあさんを丸呑みに……」
　子供たちは、ちょっとぽかんとしている。

　毎週ショートショートnote
　お題「無理無理童話88むりむりどうわエイティエイト」
　文字数406字