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【ショートショート】トラブル缶詰【ヘルプ商店街】

   トラブル缶詰

 ヘルプ商店街という商店街をくぐったN氏は、軒を連ねる店の商品を興味深く眺めていた。シャッターが目立つのは商店街の宿命だが、営業中の店はどこも趣がある。その中の「恋愛トラブル 吊り橋効果」という店で、ひったくりと書かれた缶が売っていた。
「コレは何ですか?」
 N氏の問いに、女性店員は愛想良く答えた。
「思わず『ヘルプ』って言いたくなる出来事を発生させるための缶詰よ」
「そんなものを売ってどうするんです?」
「人と仲良くなったり、自分の信頼を強めたりするために使うのよ。要するに自作自演ね。ウチは恋愛の進展のきっかけ専門店」
 ははあ、とN氏は興味深く缶詰を眺めた。「ささいな悲しみ」とある。
「でも最近は、みんな店を閉めちゃってね」
「やっぱり商店街は大変ですか」
「違うの」
 女性はため息をついた。
「商店街での影響力を強めるために缶を開けた人がたくさんいたの。滅亡の危機を迎えたのはいいけど、誰も肝心のトラブル……過疎を解決出来ないのよね」


毎週ショートショートnote
お題「ヘルプ商店街」
文字数410字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)