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大手企業を辞めて博士課程に入学する

 学部と大学院、京都で過ごした7年間で得た結論は、「科学が好き」だった。来る3年間、次はどんな結論が私を待っているだろうか。

 2年前、私が博士課程進学ではなく就職することを選んだのには、いくつか理由があった。アカデミック特有の不安定さへの懸念、女性のロールモデルの少なさ、師事していた教授の退還。対して、安定した財源と雇用契約で研究ができ、産休育休制度も充実している企業研究者が魅力的に見えたことは間違いない。
でも一番は、怖かったのかもしれない。研究室内においてすら、取りたてて優秀なわけではなく、キャリアに繋がる結果を出せたわけでもなかった。そんな私が博士課程に進学して、より鮮明に自分の限界を目の当たりすることが、ただ怖かった。
「好き」と「怖い」を天秤にかけて、後者が勝ってしまったのかもしれない。

 しかし、いざ企業研究者の道へ進んでみると、そこには別の怖さがあった。
好奇心が消える。
これまで私を突き動かしてきたものが、どんどん自分から離れていく感覚がした。
経済的安定や安定した雇用環境という基盤の上に片足が乗っているとするなら、私の場合、もう片一方の足は好奇心の上に乗っている。初めてそれがはっきりわかった。

怖さを払拭できる材料を探したけれど、結局見つからなかった。

出た結論は、生きるのって、とても怖い。

その結論を「好き」の方の秤量皿に載せたら、あっさりバランスが変わってしまった。

 この先この天秤は、何かあるたびにぐらぐら揺れて私を悩ませるかもしれない。でも人生ってたぶんそんなもん、と言えるだけ少し強くなって、新しいスタートを切りたいと思う。これから3年間、つらいこともあると思うけれど、私なりに頑張ることを決めた。


※退職を決めるのは覚悟のいることで、これについて詳細はまた別の機会に書きたいと思います。

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