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オージースラングの「下着」〜謝罪案件だよこんなの〜

【はじめに】 

今年はちょっと更新頻度高めに楽しく投稿していきたい柑橘ですこんにちは。柄にもなく新年の抱負を投稿して自らを公開処刑にした気分です。

締め切り直前にガーッと書き上げたとはいえ、やっぱりこうして人様の目に触れるところに晒してしまうと、もう逃げ場はないというか、やるしかないというか、腹も括られるというものですね。

と、先日の私にしては真面目な記事の反動、というわけではないんですが、今回は完全に日本人的視点、ならぬ聴点からのオージースラングにまつわるおちゃらけ記事です。

【アンディごめん。。。】

誰????
って感じですが、私の小学生の同級生にいたんですよ、この名前のハーフの男の子。

そして、地元には古き良きコッペパンで有名なパン屋さんもありました。
その名も、アンディズ。

残念ながらもう閉店してしまったのですが、とても素敵なブログ記事があったので紹介させていただきました。
私も小さいころは母に連れられてよく行ったパン屋さんです。

郷愁に浸るのもこれくらいにして、本題に入りましょう。
サムネとこの見出しで、話題をお察しの方もいるかもしれません。

アメリカではpantsと呼ばれ、
イギリスではunderwearと呼ばれるもの。

日本人にしてみると、パンツは「パ」のアクセントによって意味が異なり、
和語(漢語?)で表現するなら下着となるので、イギリス英語の直訳にも見えるこの言葉。

オーストラリア英語では、俗にこう呼ばれるのです。

アンディズ、と。

【何でもかんでも短くすな!!】

ここからはこの悲劇が起こるに至った背景を各言語で紹介していきます。
みなさん、オーストラリア英語は語彙がちょっと英米どちらとも変わってるのに加え、何でもかんでも略しがちなのはご存知でしょうか。有名なところでいうと、

  • G'day:good day。hi, helloの代わりに時間帯問わず使える。

  • brekkie:breakfast

  • afternoon:arvo

  • barbie:barbecue(BBQ)

  • crown lagar:crowny

あたりかな?最後は別に有名でもないか。ビールの銘柄です。
まあ要はね、なんでも短くしたいんです。
そのせいで午後(arvo)とアボカド(avo)と原住民の方々(abo)が三つ子みたいになっちゃってるんですわ。カタカナで無理やり書き分けるとしたらね、
あーヴォ、あヴォぅ、アボー、になるかな…同じか。ちなみに3つ目はアボリジニー(aborigine)の省略バージョンですが、略さなくても今はちょっと差別的に聞こえるから使わないでくださいね。代わりに、indigenous peopleという言い方がポリコレ的に失礼のない表現みたいです。

そして、オーストラリアは国旗からも歴史から見ても分かる通り、イギリスの影響を強く受けた国。ですが、underwearという単語は、オーストラリアの方々にとっては長すぎたわけですね。だからbreakfastとかと同じように略しちゃったんです。
undiesと。

ざっと調べてみましたが、undieと単数系で用いることはほとんどないようです。服が一着でもclothesと複数形で表記するのと同じ感覚なのでしょう。ちなみになぜ服はsのついた形がデフォルトかというと、基本手に服というのものは、"複数"枚の"布(cloth)"でできているからです。メガネを基本glass"es"と、靴や靴下をshoe"s"やsox"es"呼ぶのと同じ原理ですね。なんでそこだけ律儀なんだよ。

【何でもかんでもカタカナにすな!!!】

そして悲劇は日本語で起こりました。

私の同級生やパン屋さんの名前は、発音記号で表記すると〈ˈændi(z)〉となります。a+e⇨æという、なんともよくできたこの四つ葉のクローバーもどきが示す通り、「あ」と「え」の中間音です。
map, and, catなど、割と基本的な単語にもたくさんでてきます。ただイギリス英語では、これも日本語の「あ」に近い音になっています。

一方、オーストラリアスラングでの「アンディズ」は、先述の通りundiesと表記します。発音記号は、〈ˈʌndɪz〉です。太字の発音記号を見比べていただければ分かるように、英語ではこの二つの発音は異なるんですね。まあスペルで見比べてもandy('s)とundiesだしね。〈ʌ〉は、全然口を開けずにめっちゃテンション低く発音する「あ」です。

ネイティブの発音を聞き比べてみたい方は以下のサイトからどうぞ。

https://ja.forvo.com/

まあ、日本人にしてみたらどっちも「あ」なんですよね。

本当にね、カタカナを英単語の読みにまで適用してしまったがために、のちの我々英語学習者に襲い掛かっている悲劇は数え出したらキリがありません。ワンピースの巻数、では多分追いつかない。話数ならアリかもね、くらいそこら中で巻き起こっています。

ライトはrightなのかlightなのか
ライスはriceかliceか
コーンはconeかcornか
バスはbath?それともbus?

日常的に使う単語でも、カタカナになっているせいで「どっちなの?」と英単語で考えた時に混乱するものは大量です。英語の方が発音の分類が日本語のそれより細かいのでね、仕方ないっちゃ仕方ないんですけど。

日本人は虹を7色だと認識していますよね。でも、国によって6色だったり5色だったりするのは割と知られた話だと思います。
でも、だからと言って国ごとに発生する虹が異なるわけではないのです。単に、「何色に分けてるか」の問題。色に関しては、日本人の方が繊細に分けてる、というだけの話です。日本人が青と藍色を分けて呼ぶのと違い、英語ではblueで済ませちゃうんです。navy とかindigoって単語はあるけど、普段使いにしない、みたいな感覚ですね。

これが発音になると、立場が逆転します。英語の方が発音に関してはだいぶ細かいのです。だから、最初に書いたような例が連発します。英語圏の人が分けてる発音を、日本語では一緒にしちゃうから。

どこからどこを「青」と呼んで、どこからを「紫」と呼ぶのか、と考え方は同じです。
そもそも単語とか発音ごとの境界線がずれているので、同じ英単語何に日本語では表記が複数ある、なんてものも存在します。

energyが「エネルギー」と「エナジー」になってるとか
glassが「ガラス」と「グラス」になってるとか
cupが「カップ」と「コップ」になってるとか

ガラスとグラスに至っては、発音の処理の結果分裂して、カタカナ語では使い分けられてますよね。これが英語では同じ単語だっていうんだから、そりゃあ混乱もします。

この辺に関しては、発音オタクだいじろーさんのこちらの動画が大変わかりやすいです。発音に少しでも興味がある方は、冒頭の1分30秒だけでもいいから見てもらいたい。本当に。

【おまけ:何でもかんでも布教すな】

この辺りに興味を持った方は、以下の動画や本にも触れてみると面白いと思います。

名前の通り「言語学をゆるく楽しく学べる」ものなので、もう少し学問的なところまで深入りしたくなったら、この本をお勧めします。

専門書に入る気がするんですが、作者さんのユーモア溢れる語り口のおかげで割とするする読み進められます。色の話の参考文献です。文庫版には、認知科学を専門とされる今井むつみ先生が解説を寄せているというのも個人的にはアツい。

【おわりに】

今回はオーストラリアの国民性とも言える「短縮したがりズボラ気質」と、日本人の「無理やりカタカナ表記する傲慢さ」が奇跡のコラボを果たした結果の謝罪案件をご紹介しました。アンディごめんね。悪気はないんだ。

私は英語も日本語も大好きなもので、どっちがいい悪いとかじゃなく、「へぇ〜日本人の脳みそからだとこんな風に認識されるんだな〜!!」みたいに、違いを見つけては面白がっています。

今回の記事も一見ふざけてるように見えるかもしれませんが、「真面目なお勉強としての英語」が楽しめないなら、楽しめるところから英語に関わっていけばいいと思うんです。別に中学生とか高校生と違って、時間割に組み込まれててそれが進路に影響するとかじゃないんならさ、必要なとことか、やりたいなーってワクワクするところから英語の世界に入っていけばいいのでは?といつも思っています。それが大人の英語学習の特権じゃないかな、と。それで、「あーでもやっぱり文法って必要なんだな」とか、「もっとちゃんと基礎からやってみたいな」と、周りに言われたからじゃなくて、自分自身がちゃんと納得した時に、その辺の「苦手(だと思い込んでいるだけかも)な英語の勉強」にも取り組んでみたらいいと思うのです。

もしこれを読んでいるあなたが、英語の勉強や英会話を「やっぱり苦手だなぁ」と思いながらも続けているとしたら、もう少し英語を楽しく学ぶお手伝いができるかもしれません。

よければこちらの記事も見てみてください。

それでは、また何かしらの記事でお会いしましょう。

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