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気持ちが和むということ

約束の時間よりうしろにずれ込み、担当の女性はすこし不愉快感をだしているように思えた。

『あ、はーい』
元々無愛想な人には思えないからきっと時間を守らなかったことに少なからず腹を立てているのだろう。

『あれはルピナスですか?』
青い空を突き刺すように背の高いそれは鈴なりに紫や濃いピンクの花が筒状に開き美しい。
『あれはデルフォニュウムです。お客さんによく聞かれるんですよね』
厚いシャッターをピシャリっと閉められるような語尾の終わり方。

『あの子たちは暑さに強いんですか?』
単に興味本位の質問だったが、その瞬間にしゅるんとシャッターが柔らかい布地に変わったような音がした。

『暑いの駄目なんですよ』
我が子を見る眼差しにかわり、声色も変わった。
『じゃあ頑張って咲いてくれてるんですね』
『そうなんです』

薔薇の鉢も枯れた花など1輪もなくよく手入れされている。
色味のバランスもよく小さな花でも細部に興味をそそられる。

『花、お好きなんですね』
柔和な表情を向けられドキリとする。

話していて時間を忘れてくれたんだな。
花が好きって伝わったんだなぁ。
自分が大切にしてるものを大切にしてくれると人って優しくなれる。

フルーツの香りがする薔薇をわたしの鼻先に倒して
『嗅いでみて下さい』と少女のように笑う。

気持ちが和むことは大切。
いつまでも素直なじぶんでいたい

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