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逆襲の男らしさ3.0

元国民的アイドルである妻が托卵まで狙ったガチ不倫していたニュースがツイッターで大変大きな話題となっている。

芸能人の浮気なんて日常茶飯事なのだが、今回これだけ盛り上がっている理由は有名起業家である夫が妻の不倫の動かぬ証拠を突きとめて激詰めする音声が公になったためである。その内容が一言で言ってしまえばエグイ。

理路整然と妻の不貞を激詰めする夫の厳しい叱責が延々と続く。格闘技で例えるとローキックで少しずつ削り、テイクダウンからコツコツパンチを落としていく感じだ。妻が繰り出す感情論での反論という下からの関節技も完全に凌いで永遠とボコボコにし続ける。大事な会議のプレゼンに向け準備するように2週間たっぷり時間をかけてシュミレーションして来たのであろう。会社の金を横領した中間管理職の部下に証拠を突き付け激詰めする上司のような容赦ない説法が続く。元国民アイドルも完全にグロッキーだ。しかしその空間にはタオルを投げ込んでくれるセコンドは存在しない。

ビジネスマンとして大成功した末にゲットした元国民的アイドルという最高クラスのトロフィーワイフが、2歳の幼子を抱える身でどこの馬の骨とも知れない間男と托卵狙いのガチ不倫をしていた、という事実は勝ち続けてきた成功者の強者男性にとってはさぞ屈辱的なものだったことは想像に難くない。本来であれば激昂しても何らおかしくないシチュエーションにもかかわらず、入念に準備し理路整然と元アイドルの退路を断ち、過ちを思い知らせようとする氷のような冷静さと激しい暴力性に驚いた。これこそが令和の強者男性の暴力性の発露なのか。筆者が同じ立場ならここまで冷静にことを進められないだろう。

令和になりたてのころ、男らしさ2.0というミームが大流行した。男らしさ2.0とは父性を発揮して仲間や女子供といった弱者を身を呈して守るが、昭和の頑固おやじのように弱者に規範を押し付けたり服従を強いらない男性の特性を指す言葉だ。大人気漫画の鬼滅の刃に登場する煉獄さんなどが男らしさ2.0を象徴する代表的なキャラクターと言われている。

男らしさ2.0をインストールされたフィクションの中の男性陣は、身体を張って仲間や部下を助けるが、決して虫の居所が悪いからと部下を殴ったり、守ってもらってるくせに生意気な口を利くヒロインに平手打ちしたり、子供が軟弱だからとちゃぶ台をひっくり返したりはしない。ただひたすら男としての責務だけを果たして朽ちていく。

このような女性の求める理想の男性像ともいえる「強くて守ってくれるけど決して偉そうな態度はとらない男」という男らしさ2.0に対して、今回の事件で夫側が示した「平時は強くて優しくて守ってくれるけど、裏切った時は法の範囲内で徹底的に報復する」という姿勢は、男らしさ2.0の向こう側にある”男らしさ3.0”と言えるべきものでだった。

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