すんどめも信じた道をいく(4)寂寥のMURASAKI
必死にめかくし岩に抱きついた私は、老夫婦の後につづいてヨタヨタと歩き、さらに上へと登ってゆく。この時、うっかり順路をショートカットしていて月見亭をすっ飛ばす。
月見亭とは、後白河天皇の御幸の際に建てられた建物。近江八景の一つ、『石山の秋月』として有名である。
月見亭
こんな素敵な場所をスルーしてしまったとは不覚!
近江八景を逃した……。
そんな事とは露知らず、意気揚々と坂を登る。程よい負荷が心地よい。軽く荒れた呼吸によって、新鮮な空気が矢継ぎ早に肺に流れる。濃い酸素に