運動会でおどる。


娘の運動会が行われるので、しかと見届けにいく。
参加競技は大旗リレーと100m走。

ギリギリまで仕事をして、大旗リレーの開始時間に合わせて家を出る。

駐車場に車を停めて、ドアを開ける。強烈な太陽エネルギーがアラフィフメンズの柔肌を、ブリュレのように焦がしにかかる。

…あっつう!!

グラウンドに向かう途中、視界のすみに自販機を捉える。レスキューミーと、軌道を変えて自販機に。あばれるように麦茶を買うと、一心不乱にそのまますぐ飲む。

目ん玉ひん剥いてゴキュゴキュとせわしなく飲んでいると、どこからか私を呼ぶ声が聞こえる。

同じ町内のパパ友だな。声でわかる。

目ん玉ひん剥いたまま、声の方に首だけ向ける。

「こわいですよ、すんどめさん。」
「ターボ飲みかましてるとこを見られたからには生きて帰しゃしませんよ。」

パパ友の目を凝視しながら再びペットボトルを口に運ぶ。

ゴキュンゴキュン、ゴキュッゴキュッ、グビグビグビグビ…!!目玉はひん剥いている。

「こわいですからこわいですから、はやく顔戻してください。」



子供が同じクラスなので一緒にグラウンドに向かう。



大旗リレーまでにまだ15分ほど時間があったので木陰でパパ友と世間話をする。

「うっわ、すずしっ。木陰ってすんごっ。、葉っぱが効いててヤバい」
「すんどめさんが葉っぱヤバいって言うとイケナイ葉っぱみたいに聞こえます。」
「人聞きの悪い…ヤバい葉っぱって…なんですかぁ」
「だから、目ん玉ひんむかないでくださいw」

うひひアハハとおっさん二人が木陰で笑いあっていると、大旗リレーの時間がすぐやってきた。


慌ててベスポジに陣取るおっさん二人。


娘は白組、白い旗。アンカーの1つ前に走る。

白旗は序盤から飛ばし、トップで走る。ぐんぐん離す。一気に開いた差をキープしながら次々と大旗をリレーする。

これは決まったかも

そう思っていた矢先、娘の手前でまくられて、ついに抜かれて2番手に。3番手ははるか後方。

そして白旗が娘の手に渡る。
私は声も出さずにじっと見ている。(ひん剥いてはいない)

キャンディラッシュで魅せた快足を駆動させてトップの背中に迫る。小さな体で旗をはためかせてトラックをまわる。

速度を落とさずコーナーを駆ける。
決して速くはないが、安定した走り。

心地よくまわる両脚が、後続の猛追を許さない。そのままアンカーに白旗を託す。

アンカーは強烈な脚力で大地を蹴り上げ、土を掻いて飛び出していった。

白旗が風圧でしない、後ろに流れる。トップとの差が少しずつ狭まる。あと少しあと少し…あと、少し!

僅差。順位は入れ替わらず、白旗は2位で走り抜けた。

娘は膝を抱えて背筋を伸ばし、満足そうに座っていた。


娘の100m走開始には、まだちょっと時間があるのでおっさん二人はまた、季節外れの灼熱に耐えきれず、ヤバい葉っぱに助けを求め、小さな木陰にかざされにいく。


再び、うひひあははと歯ぐきむき出しで笑っていると、ゴキゲンな音楽が流れてきた。

と同時に、グラウンドにいる児童の中にも、ゴキゲンに浮かれて踊り出す者が多数現れた。

ちなみに、音楽とともに行われていたのは、玉入れだった。

みんな同じ踊りをしているんだけど、めっちゃ楽しそう!ってか踊りたい!

それが、コレ。
↓↓↓

当然、踊る!!!!!

木陰で葉っぱキメたおっさんがいきなり踊り出したので、パパ友は手を叩いて笑っていた。

ジャンボ〜リミッキー!
ジャンボ〜リミッキー!

ぴょんぴょん跳ねると、体の奥から幸せが湧き出る。

なにコレめっちゃ楽しい!競技中、ひたすら踊る。
知らなかったなぁ、『ジャンボリミッキー!』


ただ、俺しか踊ってない。


空がとっても青い。
音楽とともに宙を舞う玉がとってもかわいい。
とんとこ飛んで、パフパフ落ちる。

子どもたちが踊る。私も踊る。

ジャンボ〜リミッキー!
ジャンボ〜リミッキー!



最後、かごに入った玉を数える。小さな玉を、一つずつ空に高く投げる。

い〜ち、に〜い。子供たちは座って数える。

広い空にポーンと投げる。

真っ青な空に、赤、青、白、黄。
各々おのおのばらけて、高く、高く。
小さい玉がなんだか孤高。

なぜだか、妙にエモかった。


玉入れが終わると、いよいよ娘の100m走が始まる。


パパ友は踊っている間にいなくなる。私はととくさとゴール近くに陣取り、娘の番を待つ。


タイムが近い子らで競い合う100m走。
娘の番がやってきた。

緊張してるんだろうな。目を細めて娘を捉える。

そしていよいよ、火蓋が落ちる!

遠くから全力で走ってくる娘。すんごい笑顔!めっちゃ楽しそう。

笑顔で走ってるのにびっくりする。あんな笑顔で走るかね!いいぞ、娘!!

ビリだったけど、それがどうしたといわんばかりの笑顔。6位の待機場所で座る娘が、誇らしげな顔でこっちを見たので慌てて手を振った。

かっこいいぜ、娘。




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