おもしろい
こんにちは。
週の真ん中水曜日、いかがお過ごしでしょうか。
本日は「面白い」という事について考えたいと思います。
おもしろい
「面白いってなんだろうな」
今年の春から大学2年となった圭太は考えていた。彼はお笑いサークルに所属し、親友の玲央とコンビを組んでいる。
「なぁ玲央、今度の新入生歓迎会の漫才どんなネタにする?」
圭太が尋ねると、気のない声で
「あー俺はなんでもいいよ」
と玲央が答えた。
大学まではサッカーに打ち込んでいた2人だったが、進学を期に新しいことに挑戦したいと思い、面白い先輩に憧れてこのサークルに入った。
しかし2人は今スランプに陥っていた。
「先輩たちの去年の新歓漫才面白かったよなぁ。俺たちにはどう頑張ってもあんな面白い漫才できる気がしないよ。(笑)」
玲央が言うと、
「そんなんじゃダメだ!俺たちは新歓漫才でグランプリを取るんだよ!」
圭太は反論すると勢いそのままネタを紙に書き殴った。
そしてしばらくしてネタを書き上げたのたが、
「うーん、いまいちだな。ボケがシンプルすぎる。」
できたネタをみて玲央は冷静に分析する。
「最近何のために漫才やってんのかわかんなくなってきたわ」
圭太がそういうと同時に、サークル室に高谷先輩が入ってきた。
「なんだお前らまだネタ書けてないのか。見せてみろよ。んー。ボケがシンプルすぎるな。これだとお客さんが飽きる。新歓漫才まであと1ヶ月切ってるのにこれじゃダメだ。」
高谷先輩も玲央と同じ感想だったらしい。その言葉にいてもたってもいられなくなった圭太は「高谷先輩、俺らどうやったらもっと面白くなれますか?教えてください!」と高谷先輩に頼んだ。
「いいだろう。教えてやる。お前らに足りないのは、『漫才を楽しむこと』だ。お前らはお客さんを笑わせることに必死で、自分たちが漫才を楽しめてない。それじゃダメだ。お客さんはお前たちの表情や言動全てを見てるんだ。」
その言葉は圭太たちにとってまさに目から鱗だった。
「明日から俺が漫才をみてやる。新歓漫才までの1ヶ月で新ネタを3本完成させて、何回も練習しろ。」
それから圭太たちは言われた通りにネタを作り、練習した。そして、新歓漫才の当日を迎えた。
緊張した圭太は不安を誤魔化すように玲央に話しかける。
「あれだけ練習したんだしきっと大丈夫だよな?練習しすぎてこのネタが面白いのかどうか自分じゃもうわかんねーよ。」
「んー。わかんねーな。(笑)」
やはり玲央は気の抜けた返事だが、声は少し震えている。
ついに彼らの出番がきた。
マイクの前に立つと先ほどまでの緊張が解けた。目を閉じ、大きく息を吸い込んで前を見ると白い光の先にお客さんの顔があった。
漫才中はお客さんはずっと笑っていた。けれどこの日1番彼らの漫才を楽しんでいたのは他の誰でもなく、圭太と玲央だったのである。
「漫才っておもしれー!」
おしまい。
面白い(面白し)の「面」は目の前を意味し、「白い」は明るくてはっきりしていることを意味した。 そこから、目の前が明るくなった状態をさすようになり、目の前にある景色の美しさを表すようになった。 さらに転じて、「楽しい」や「心地よい」などの意味を持つようになり、明るい感情を表す言葉として広義に使われるようになった。
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