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P-N-

 気がつくとそこは銀世界だった。一寸先も見えないほど強く吹き荒れる雪は視界とともに体温を奪っていった。冷気が身をさし、不安と恐怖が私を襲った。

私はいつからここにいたのだろう。自分は一体何者なのだろう。駄目だ。思い出せない。
途方に暮れて下を向く。そこで初めて私は自分がベルトコンベアに乗せられて運ばれていたのだと知った。

しとしと。私の体は雪が積もり始め真っ白になっていた。いますぐこのベルトコンベアから降りたいが、寒さのせいか体がうまく動かない。どのくらい時間が経ったのだろうか。空が暗くなってきた。

ドバドバ。何かが空から落ちてきた。泥のように濁った色をしたそれは私の全身に降りかかった。妙に生ぬるい。視界が悪い。何も見えない。真っ暗だ。嫌な想像をどうにかかき消し、ベルトコンベアの行く末に身をまかせる。早く目的地に着いてくれ。

ゴロゴロ。いつの間にか眠りについていた。どのくらい寝ていたのだろうか。あまり長くはないと思う。まだ空が暗い。しかし寝ていたことなどよりはるかに大きな衝撃が私を襲った。ベルトコンベアに終わりがきたのである。

ぼたぼた。無事着地できたが、ここはどこなのだろう。視界が悪い。車のようなもので運ばれている。気がする。少し気分が悪い。しかし周りは相変わらず凍えるほど寒く何も見えない。

誰か私が何者なのか教えてくれ。私はこれからどうなるのだろう。あれからどれくらい経っただろう。私はまだ真っ暗な場所にいる。突然眩しい光が差し込んできた。初めて光に触れたような感覚だ。

グサ。暗闇から抜け出し安堵したのもつかの間、私は刺された。
そして浮遊感を感じる。刺されたまま持ち上げられた。
しかしこの時私はやっと理解した。


ああ、私はPINOだったのか。全ての謎がやっと解けた。
こうして私は安心して口の中へ運ばれた。

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