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食事摂取基準2020と身体活動・運動ガイド2023のたんぱく質摂取の違い

こんにちは。食事ではどのようなことを意識していますか?朝日新聞 Reライフ.netの記事によると摂取を意識する栄養素のトップはたんぱく質とのことです。

朝日新聞 Reライフ.net [1] より引用

たんぱく質と聞くと、昔は筋トレをしている人が意識している印象が強かったと思いますが、今では生活習慣病の予防だけでなく、健康で長生きするためには欠かせないものになってきているんだろうなと思います。

さて、そんなたんぱく質ですが、最近僕の中で気になっているのが、厚生労働省が先日公開した ”健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 [2]” と ”日本人の食事摂取基準(2020年版)[3]”に示してあるたんぱく質の摂取について、かなり重要なはずの、運動量による必要たんぱく質摂取量について微妙な齟齬があることです。

どちらも厚生労働省が発表している非常に需要なガイドラインで、高明な先生方が策定しているものにも関わらず、齟齬があるというのは「ん?」となってしまうことじゃないかなと思います。

そこで、この記事ではどのような齟齬があって、僕はどのように考えているのかを紹介したいと思います。

この記事を書いた人:Pon
PhD|食品会社勤務|元・研究開発職|腸内細菌や食品の機能性に興味があります|Xでは気になった論文を紹介したりしています(@pon_yurublog


食事摂取基準の運動量別たんぱく質量

早速ですが、食事摂取基準と身体活動・運動ガイドのたんぱく質摂取で齟齬があった箇所は身体活動のレベル別の必要たんぱく質量です。

下記が食事摂取基準に示されている身体活動レベル別の必要たんぱく質量です。身体活動レベルについては、表の注釈などには、どの程度なのか定義が示されていませんでしたが、別の栄養成分の説明の中では身体活動レベルⅠを自宅から出ないような、ほとんど動かない生活、レベルⅡを自立した生活自立した生活ができる程度と記載があったので、参考にしてください。

日本人の食事摂取基準2020 [3]より



こちらを見ていただくと、身体活動レベルが高くなるほど必要となるタンパク質が多くなります。これは身体活動によって筋肉の分解が起こるためと考えられ、一見、妥当な数値なのかなと思っています。

身体活動・運動ガイドの運動量別たんぱく質摂取量

では、次に身体活動・運動ガイドに示されているたんぱく質摂取量を見てみましょう。

こちらは、食事摂取基準のような明確な値があるわけではないのですが、次のような説明がたんぱく質接種について記載がありました。

健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 [2]より


読んでいただくと分かる通り、運動不足はたんぱく質の異化、激しい運動はたんぱく質を分解させるため、運動強度と必要なたんぱく質はU字型のグラフになるということでした。

引用元の論文は原著論文ではなくレビュー論文でしたが、下記の画像のように運動強度が低い場合にはたんぱく質摂取量がより必要になると示されています。

Millward et al. 1994 [4] より引用

食事摂取基準では身体活動レベルが低い場合には必要たんぱく質量が少なかったので、この2つのガイドラインに齟齬があるようでちょっと気持ち悪いなと思いました。

【補足】
たんぱく質の異化と分解は、分解されてエネルギーとして利用される場合には異化、運動によって筋肉が損傷し、修復のためにたんぱく質が利用される場合に分解と言葉を変えているようです。

ガイドラインに齟齬はあるの?解釈はどうするの?

さて、この二つのガイドラインですが、結局のところ、どちらかに間違いがあったのでしょうか?どのように解釈すべきなのでしょうか?

かなり丁寧に読み返してみたのですが、食事摂取基準では運動不足の場合にたんぱく質の異化が進んでしまうということを言及していませんでした。ですが、その一方で、食事摂取基準の身体活動レベルというのは、実は運動の強度に言及していません

僕からすると、身体活動レベルⅠ、Ⅱ、Ⅲは運動強度だって違うだろうと思うんですが、運動強度は変わらないけれど、身体活動レベルは結構違うということがあるかもしれません。そういう意味では必ずしも矛盾があるわけではないと思います。

ただ、身体活動レベルが低い人は基本的には運動強度も低いと思うので、僕は身体活動レベルが低い人はたんぱく質は体たんぱく質の異化を考慮して多めに摂取するのが良いと思います。

じゃあどれくらいが適切なたんぱく質摂取量なのか?

では、どれくらいが適切なたんぱく質摂取量なのかを最後に考えたいと思います。

再掲:日本人の食事摂取基準(2020年版)より引用

僕としては、身体活動・運動ガイドに記載されている通り、運動不足の人は多めにたんぱく質を摂取した方が良いというのはその通りだと思いますが、たんぱく質の摂取を意識して、過食になってしまうことは避けたいですよね。

また、身体活動・運動ガイドには具体的な必要たんぱく質量も言及していません

そういった、食事全体のバランスや身体活動・運動ガイドの記載を考慮すると食事摂取基準の範囲内で運動不足だと思う人はタンパク質を多めにとったほうが良いんじゃないか?という結論になります

目安量としては、

成人男性(18-50歳くらい):95〜115g(1食あたり35gくらい)
成人女性(18-50歳くらい):70〜88g (1食あたり27gくらい)

は摂取することをおすすめしたいかな〜と思います。(あくまでも、目安ですが。)

たんぱく質をとる場合には、牛乳や豆類、魚類などを意識すると良く、肉も良質なたんぱく源ではありますが、飽和脂肪酸の摂取はできるだけ抑えたいので、バランスは考えながら摂取をしましょう。

サプリメントなどに抵抗がない方にはプロテインもおすすめです。僕はそこまで筋トレとかをちゃんとしていませんが、プロテインを摂取しています。

また、立命館の藤田先生がさまざまな記事で紹介されているたんぱく質摂取で重要なこととしては、毎食しっかりと摂ること、特に夜間にもたんぱく質の異化が進むことから、朝しっかりと摂ることをおすすめしています[5]。

時間栄養学という栄養学の分野があるんですが、ほとんどの研究で共通して言えることが、みんな朝食、適当すぎ!という問題なんですよね。肥満予防としても朝食は重要ですし、朝食が体内時計のスイッチにもなりますので、朝食はしっかり食べましょう!そして、朝食はついつい、エネルギーや糖質(炭水化物)を意識しがちですが、たんぱく質もしっかり摂って一日を元気に過ごしましょう。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう。

参考

  1. 朝日新聞 Reライフ.net, 意識している栄養素 第1位は「たんぱく質」 LINK

  2. 厚生労働省, 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 LINK

  3. 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2020年版) LINK

  4. Millward DJ, Bowtell JL, Pacy P, Rennie MJ. Physical activity, protein metabolism and protein requirements. Proc Nutr Soc. 1994 Mar;53(1):223-40. doi: 10.1079/pns19940024. PMID: 8029230.

  5. 【たんぱく質の摂り方】筋肉量の低下を防ぐには「朝20gのたんぱく質」を食べよう!下半身の筋トレと併せて元気な体を維持 - かぽれ LINK

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