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【曲目解説】プレ・インヴェンションから 32.Canzonet

1.タイトルについて
 C.G.ネーフェ作曲。
 Canzonet(カンツォネッタ)とは、小さなカンツォーネという意味で、わかりやすく言うと「小さな歌」という意味です。
 とても愛らしい旋律が魅力的な一方で、お母さんやおばあちゃんが赤ちゃんに子守唄を歌っているような優しさも感じます。

2.構成について
 ハ長調、4分の2拍子で、速度記号はAllegrettoです。27番のAnglaiseも同じAllegrettoですが、調性や拍子の違いがあるため、まるっきり同じものと捉えるのは少し違う気がします。
 全体はABAの3部形式で、B部で少し陰りのあるロマンチックな音楽へと切り替わります。

3.演奏上の注意
 「1.タイトルについて」でも述べましたが、Canzonetとは「小さな歌」という意味です。この「小さな」から、どんなニュアンスを感じますか?音量のことでしょうか。曲の規模のことでしょうか。
 全体はメゾピアノから始まるため、確かにコンパクトな印象ですが、9小節目からのB部ではフォルテまで発展していきます。また、全体が24小節とこれまたコンパクトな規模となっていますが、起承転結が非常にわかりやすく作曲されていますね。

 この曲を初めて聴いた時のイメージを大切にしてください。これは個人的な感想であり正解ではありませんが、ひとつのイメージとして参考にしてみてください。ぼくは「大体10歳前後の女の子が、天気のいい日にお花畑で可愛らしく鼻歌を歌っている」感じがしました。
 根拠としては2つです。まず調性がハ長調であること。ご存じのとおり、ハ長調は白鍵だけで演奏できる調です。何色にも染まらない純真無垢なキャラクター。天真爛漫で自由な性格です。W.A.モーツァルトのピアノソナタ K.545 を聴いてみてください。
 そして2つ目が、メロディーがシンプルであること。音域はやや広いですが、シンプルで美しいメロディーです。一度聴いたらすぐ歌えちゃうくらい覚えやすく、親しみを感じると思います。

 純粋で可愛らしいイメージと捉えると、どのように演奏したいかが見えてくると思います。
 全体的に小さなスラーが多い印象ですが、メロディーの大きな流れやフレーズ感を大切に、その中でアーティキュレーションに遊び心を持たせましょう。

 冒頭A部はこの曲の顔です。右手と左手のタイミングをきちんと揃えて、清潔な印象を大切に。強弱の変化もきちんと表現し、一音一音突き過ぎないよう気をつけましょう。
 9小節からのB部では、少し陰りが出てきますね。ここからは、9.10小節、11.12小節、13.14小節と2小節ずつのグループになっていますが、9.10→11.12→13.14と進むにつれ、音の並びが少しずつ変化していきます。短2度音程と長2度音程の違いですが、よく聴き比べてみましょう。表情が少しずつ変化していく様が感じられると思います。
 表情がコロコロ変わって、また17小節のA部に戻ります。冒頭のA部と後半のA部では強弱記号に違いがあります。フォルテでも重くなりすぎず、ハッピーな気持ちで楽しく曲を終えましょう。


◆参考文献
・全音楽譜出版社「プレ・インヴェンション」
・全音楽譜出版社「プレ・インヴェンション 指導と手引き」

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