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首都にはいつも魅せられる(スペイン・マドリード)

マドリード編

スペインの首都、マドリード。首都というと、オーストリアのウィーン、フランスのパリ、チェコのプラハ等、重大な歴史と密接に関わっている都市が多い。
一方で、マドリードは世界史で扱われることが少なく、世界史旅をしている身として他都市と比べて街並みは面白くはなかった。

とは言え、マドリード王宮・ソフィア王妃芸術センター・プラド美術館・国立考古学博物館は非常に興味深かった。これらがなければ自分の中でマドリードは残念スポットに成り下がっていただろう。

マドリード王宮

まずは概要から。
マドリード、というよりイベリア半島は元々ローマ帝国の支配下にあったが、8世紀にイスラム勢力の支配下に置かれた。その後、11世紀以降はキリスト教圏に組み込まれ、現在の王宮はフェリペ5世によって建てられた。

宮殿内は豪華絢爛。ヴェルサイユ宮殿やシェーンブルン宮殿同様、優雅な印象を宮殿内に取り入れるために神話が天井に描かれている。

以後、館内撮影禁止のため感想だけ。

肖像画は主にスペインの画家ゴヤによって描かれている。展示品で印象的だったのは4つ。

①食器
スペインはフランス同様、ブルボン朝の時代があり両国は良好関係にあった。そのため、スペインの食器に加えて、フランスからもたらされたものも多く展示されている。このように日用的なものにまで歴史が深く関係しているのは面白い。

②ストラディバリウス
世界一高い楽器とも言われるストラディバリウスが5点展示されていた。(僕が見つけた限りでは…) これを見られる事自体に興奮したと同時に、それだけのコレクションが出来るだけのスペイン王家の繁栄が垣間見える。

③日本の影響
日本様式の壺は非常に印象的だった。歴史を遡ると、16世紀に天正遣欧使節はフェリペ2世と謁見し、日本との交流があった。それが理由かは分からないが、少なくともスペインに日本文化が流入したことは確かだろう。日本様式の壺を見つけた時、当時から日西関係が決して遠いものではなかったと気付かされた。

総括
やはりヴェルサイユ宮殿やシェーンブルン宮殿等と比べると規模は小さいのでどうしても見劣りしてしまった。極論、ただ見学するだけでは違いが分からず、何の刺激もない。
だが、その中でも文化の違いや歴史的背景を必死に読み取ることで、見学がもっと楽しいものになる。それは一定の知識量がないと不可能なことで、僕はまだまだ勉強不足だなと痛感させられる。
もっと勉強しよう…!


ソフィア王妃芸術センター

ここにはピカソの『ゲルニカ』が所蔵されている。それだけのために訪れる人が多いが、他のピカソの作品は勿論、ダリミロの作品も所蔵されており、現代美術を楽しむことができる。
個人的には洗練された宗教画や風景画以上に、見る者が自由に絵画を鑑賞できるという点で、現代美術は見ていて楽しい。作品をいくつか載せていく。

サルバドール・ダリ

ジョアン・ミロ

パブロ・ピカソ
パリのピカソ美術館でもかなりの所蔵数だったが、まだまだあるのかという印象、多作。

『ゲルニカ』のエリアは撮影不可。残念…。

他にも見ていて楽しい作品が多く、挙げるとキリがない。学生は入場無料なので是非〜

プラド美術館

こちらもソフィア王妃芸術センターと同様、学生は入場無料。しかも、所蔵される作品も一級品ばかり。
残念ながら撮影不可なので、印象的な作品トップ5だけ感想を。

アルブレヒト・ドゥーラー
『アダムとエヴァ』

以前、「世界一有名な絵画はレオナルドの『モナ・リザ』で、世界一影響力のある絵画はドゥーラーの『アダムとエヴァ』らしい」と言ったが、どこにもそのような記述はなく、アントワープのドゥーラーハウスの独断なのだろうか…?
何はともあれ、真っ暗な背景とのコントラストと完璧な肉体美。プラド美術館で一番好き。

ラファエロ・サンティ
『枢機卿』

冷たい視線と背景と人物のコントラストが鮮明で、本物の人間よりもリアルとも言われている。ぼーっと眺めていると人物だけくり抜かれて目に浮かび上がってくる。この感覚を言語化するのは難しいが、冷たい作風ながら見る者に訴えかけてくる迫力は印象的と言わざるを得ない。

ピーター・ブリューゲル
『死の勝利』

生きた骸骨が生きた者を死へと招いたり、行進したり、首吊りをしていたり、非常に悍しい作品になっている。まるでホロコーストを彷彿とさせるような印象を与える。
これを見て、仮に今生きる者が皆皮がなければこのような骸骨の世界になっているわけで、″死″だけでなく、皮と頭脳が個人を固有たらしめているんだなと再認識させてくれる作品でもあった。

ピーテル・パウル・ルーベルス
『東方三博士の礼拝』

バロック美術の巨匠ルーベンス。相変わらずダイナミックな動きのある絵で我々に迫ってくる。
この絵の面白さは、ルーベルスが数々の巨匠から影響を受けて、それが見事に融合している所にある。
彼が見習っていたティツィアーノからは繊細なタッチ、ミケランジェロからは奴隷の肉体美、カラヴァッジョからは色彩の明暗の影響を受けている。

実物でなくとも写真からその繊細さは伝わるだろう。解剖学に精通し、その知識を彫刻に落とし込んでいたミケランジェロの肉体表現も、ルーベルスの描く裸体の奴隷には反映されている。最後に明暗であるが、全体的に暗い描写の中に、キリストが照らす明るい光でコントラストを明確にしている。カラヴァッジョの絵を見るとその影響を受けていることに納得がいくはず。

今までアントワープのルーベンスの家や、数々の美術館を見て・調べて・学んできた知識が凝縮していた作品で、「絵画がわかった」瞬間を感じさせてくれる作品だった。そういう意味でも僕にとっては印象的な作品の一つ。

ディエゴ・ベラスケス
『十字架上のキリスト』

この旅で聖堂や絵画などを通して、一番見たであろう磔のキリスト。その中でもベラスケスのこの作品は群を抜いて好きだ。

何と言っても明暗のコントラストが磔のキリストを際立たせていると同時に、気を失っている、若しくは死んでいるにも関わらず強調されたキリストの顔が落ち着いていて美しい。

こんな感じでプラド美術館を堪能しまくったので、お土産まで買っちゃった。読書欲が間違いなく上がる!(ベラスケスのキリストがしおり化していなかったのは非常に残念…)


国立考古学博物館

ここではスペイン国内の歴史を先史まで遡って概観することができる。何より興味深いのはイスラム勢力による支配下の展示品。

そして!イスラム帝国で用いられていたディナール金貨も!!これは興奮した!!!

イスラム支配前のローマ支配下の展示品。

そしてこの博物館の面白さはこれだけではなく、なんとスペイン北部のアルタミラ遺跡のレプリカが展示されている。アルタミラは旧石器時代に描かれた壁画があることで有名。規模こそ小さいが、雰囲気はある。


終わりに

マドリードは思う存分楽しんだ。悔いはない。
ただ悔いが残らないほど「次この街に来ることはあるのか?」と思うし、何だか寂しい気もする。悔いを残す方がいいという見方もあればその反対もあるし、悩みは尽きない。まぁとにかく前を向いて今を全力で生きよう。(下の写真は転載許可貰いました笑)

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