劇場版『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

まぁ泣きますよね。泣かない理由がないというか、大体のシーンで登場人物が泣いているので、もらい泣きしてしまう。

素晴らしい作品だった。以下では特によかった点を2点挙げておこうと思う。

①自己矛盾

本作品は本心と行動が一致しない人物たちがドラマを作り出す。丁度最近の関心事である「人間は絶えず自己矛盾を孕む」という見方がダイレクトに描かれていて、共感しやすいシナリオだった。例えば、「今日は自炊したいけど、外食しようかな」と悩むのも自己矛盾。やりたい自分とできない自分。これが人間の弱さを表した自己矛盾の例だと思う。けれども、同時にそれは高貴な美学でもある。行動の裏側にある見えないところに尊い本心が眠っていたりする。

主人公のヴァイオレットをはじめ、みんなこの弱さと高貴な美学の間を彷徨う。そしてそこにドラマが生まれる。涙もある。そんな人間くささを感じさせつつも、その美学を讃える作品であるようにも思える。

②時間軸の推移

時間軸としては現在・過去・大過去(?)の構成で描かれる。過去が主題なのため、ストーリー上現在がなくても成立する。ただ、現在から過去を振り返ることで過去と大過去が際立つ効果を見せてくれる。

この時間軸の扱いは本当に見事。この仕掛けも感動させてくれる要素の一つだ。ちなみに、冒頭5分ほどのところに大過去と現在が繋がるシーンがあるのだが、私はその時点で涙腺崩壊(笑)

総括

もっともっと語りたいところだが、ひとまずここまで。本当に素晴らしい作品だ。ただ、敢えて不満を挙げるならば、先の展開が読めてしまうところ。そして鑑賞者にあれこれ考察させる余白があまりないところ。シナリオが完璧すぎることによるのか。

でも結局、そうは分かっていても泣いてしまう。これも自己矛盾の一種だろうか。

ぜひ劇場へ足を運んでみてください!



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