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コロナでわたしは仏教について学びはじめた

瀬戸内寂聴になりたい。
そんなことを言うとみんなに笑われる。わたしも冗談半分で言っているところはあるが、割と本気だったりもする。
そして職場の同僚からは「でも瀬戸内寂聴って、恋多き女だったらしいよ。」と言われる始末。Tinderで毎週違う男とセックスしていたわたしのどこが、恋少なき女というのか。
まあ、Tinderの男には愛や恋などという感情はなく、むしろ何の感情もないのだが、社会の中でわたしは「真面目でまっとうな人間」としての姿を保てているらしい。
わたしはうまく社会の中に溶け込みながら、日夜運命のセフレを探すべく、Tinderに励んでいた。

瀬戸内寂聴みたいなことを言う友達がいる。
2つ年上で、もともとは職場の同期だった。彼女は人生何回目だろうと言うほど常に冷静で、的確にアドバイスをくれた。そして何よりわたしの一番の理解者でもある。わたしはいつも彼女に憧れ、彼女のようになりたいと思っていた。
食事に行けばいつも2人で「悟りを開きたい。」なんて話していた。

コロナがまだまだ猛威を奮っている2022年2月。
元夫からコロナに感染したと連絡があった。なぜわたしにそんな連絡がきたのかというと、子供がその前の週に元夫の家に泊まっていたからだった。ほどなくして子供も陽性だと判明し、子供は元夫のところで療養することとなり晴れて濃厚接触者となってしまったわたしのひとり自宅軟禁生活が始まった。

初めは自宅でやれる範囲の仕事をするつもりだった。しかしADHDであるわたしのポンコツな脳みそは『ここは家! 仕事をするところじゃないの!』と全く切り替わってくれず、憧れだった在宅ワークは断念せざるを得なかった。そもそも、家で仕事を片付けたところで給料が発生するわけでもなかったので、わたしはこの休みを満喫することにした。

そこで思い出したのが仏教だった。

TikTokを見ていた時のことだった。
『セフレ』という見出しでお坊さんが「だらしない関係は心の安寧に不健全である」と説いている動画があった。
「満たしても満たしてもすぐに渇いてしまう渇愛(かつあい)」、「求めるものが得られない求不得苦(ぐふとっく)」。
これらの言葉は今のわたしに刺さりに刺さりまくった。

思えば、わたしの人生は欲まみれだった。欲望に支配されて、苦しい思いをしたことは幾度となくある。
仏教では、欲望は苦しみを生み出すとされるらしい。その欲望を捨てるにはどうしたら良いのか。

それは『悟りを開くこと』だった。

気づくとわたしは仏教書を購入し、夢中になって読んでいた。コロナ禍の、冬の終わりのことである。

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