トークサロンについて。あと、もうひとつ。

生きていくって大変だな。
ということを、ネットを見ていると感じてしまうからそっと閉じたりしています。先日見た、岩井澤健治監督の『音楽』(原作・大橋裕之)が大変すばらしかったので、書いておきます。何考えてるんだか分からない研二が、音楽に触れて、何だかよく分からないものを発射させるまでのあれこれ。画の力にも心を揺さぶられて、最高でした。

ほろびて『ぼうだあ』が終わりました。
ご来場いただいたみなさま、誠にありがとうございました。
お入り、ご観劇いただくことができなかったみなさま、申し訳ありませんでした。また上演する際に、ご覧いただけるよう整えて参りますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

いろいろと、聞かれてもいないのに書きすぎるのはあんまりよくない気もしますが、次回のほろびてがいつになるのか、僕自身にもよくわかってないので、忘れてもらわないためにも、書いてみます。

といっても、作品についてをここに書くのはやっぱり少し抵抗があるので、本編上演後に行ったトークサロンについて。

僕は半年ほど、「アーツアカデミー」という場で芸術に取り組むための課題解決プログラムというのでしょうか、そういう講義を受けていました。その動機はこれまた、「アーツアカデミー」に応募したときの書類にたっぷり書き付けてあるのでここでは割愛させていただきますが、講座で出会った、出自の違う同期たちと話をしていくうちに、多角的な視点はいいものだと感じるようになりました。それぞれが自分の価値観でものをいう、ということが重要だと思ったわけです。加えて、「否定」を前提としないやりとりもよかったのです。もちろんお互いに利害関係がないわけですから、当然と言えば当然ですが、それだけではなくて、それぞれが、「その場合、私だったら〜」と自分の環境に照らし合わせて話してくれたりしたのです。自分の求めている答えそのものではないけど、たくさんのきっかけがありました。こういう、何かについて話すことって実はあまりやらないというか、仲のいい人と飲み会で、ということはあっても、出自の違う人たちが集まってということは本当に稀だと思います。

それと同時に、最近のほろびての作品では、いくつかの「テーマ」を入れてて、それについて考えれば考えるほど、誰かと話したい、という気持ちが大きくなっていったわけです。それで、今回せっかくだからやってみようということで、制作さんとか舞監さんとかにも相談して、やることにしました。

とはいえ、本編が2時間あったので、その後にやるとしても、あんまり時間は取れない。そもそも、お客さんで興味がある人、話したい人なんているのかなという疑問もあったので、当初は舞台の隅っこに僕が出てきて、流しのミュージシャンみたいに一人で勝手に喋ってて、そういうのに興味がある人がフラッとやってきて、おもむろに会話し始める、みたいなイメージで始めました。初日はそれで、僕の声も小さいだろうということでマイクとスピーカーを用意して始めたら、一人アフタートークみたいになり、お客さんも15人くらい残ってくれて、黙って聞いてくれたのです。それはそれでうれしかったのですが、個人的には「対等に喋る場」を作りたいと思っていたので、イメージとちょっと違うことが分かりました。

それで翌日は、マイクもスピーカーもやめて、客席の前方に座って、誰かがいたら勝手に話しかける、ということを始めました。ここから、お客さんとの会話が生まれました。

質問もいいですし、感想もいいですし、全然関係ない話でもいい。とにかく、劇場という場に足を運んだ人たちで、会話できるというのは、それぞれの視点を共有できるいい機会になると思います。今回はいろんな感想が出てきて、わかった/わからなかった、といったことなど、それぞれの言葉で話してくれるようになりました。言葉にならない思いを、すぐに言語化しないまでも、その場にいるだけで、みんながどう感じていたのかがわかってきたりしますし、自分の視点と他者の視点との距離を測るものさしにもなりえます。面と向かった相手同士ですから節度もありながら、言い方をみなさんが考えながら、言葉を交換し合う。いい時間が生まれました。

もちろん課題はまだまだあります。時間が長くなりがちだとか、お題をはっきり定めた方がいいんじゃないかとか。それも、やっていくうちにブラッシュアップしていく気がしています。

加えてトークサロンがいいと思える部分には、スタッフさんも参加できていたというところです。さまざまな現場に関わっている人の目線。そこまで交じえて意見交換できる場所はほとんどない気がします。僕がそういう場所を知らないだけだとも思いますけど。でも、みなさんが肩書きも明かさずに、自分の意見を言うというその場は、とても大きな可能性があるなと思いました。

ほろびての次回公演はいつになるかまだ、分かりませんが、次も絶対に「トークサロン」も開催しますので、もし興味を持たれた方はぜひとも参加ください。言葉の交換をたのしみにしています。

■「トークサロン」とは別で、孤立を感じているソロカンパニーや小さなカンパニーへ向けたゆるい集まりの場(名称未定)も近々立ち上げる予定です。立ち上げる、というほどのものでもない、小さなスタートですが、もし、誰も相談相手がいない、と言ったときや、誰かにモヤモヤを聞いてもらいたいと言った人がいたら、ちょっと顔を出してみてください。ゆるーい繋がりを作ろうと思っています。こちらは続報をお待ちください。

いただいたサポートは、活動のために反映させていただきます。 どうぞよろしくお願いいたします。 ほそかわようへい/演劇カンパニー ほろびて 主宰/劇作、演出/俳優/アニメライター