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AEDサスペンス「心止村湯けむり事件簿」

「待て! まだ死んでない!」

 すでに御存知の人も多いかもしれませんが知らない人のために、今回は最近公開された「AEDサスペンスドラマゲーム」と銘うたれた「心止村湯けむり事件簿」を是非紹介したいです。
 パソコンとスマートフォンでプレイできます。(スマホはアプリではなく、ブラウザで同URLにアクセス)
 無料でプレイできます!
 ちなみに心止村で「しんどむら」と読みます。むりくりな名前…(^^;)

 紹介の前にAEDとは何かを知らない人もいるかと思いますので説明しておくと、「自動体外式除細動器」(Automated External Defibrillator)の略で、心停止が起きた際に病院外でも使える電気ショック機器の事です。今では駅などの交通インフラはもちろん、人の入りの多い商業施設などでも置かれています。
 このゲームは未だ認知度が低いAEDの認知普及の為に「日本循環器学会」と「減らせ突然死プロジェクト」によって共同製作されたものです。サスペンス仕立てでAEDの使い方を覚えてもらおうという趣旨のゲーム(?)です。
 しかし「それにしてはふざけすぎじゃないか!」と感じた人もいるでしょう。賛否両論は覚悟の上だと思われます。
 ですがこれには救急の現場での切実な現状が関わっています。
 とにかくAEDの事をたくさんの人に知ってもらいたい。しかし堅っ苦しいe-ラーニングなんて作っても、それほど見てくれないのではないか。楽しさを演出し、まずは興味を持ってもらい、自然にAEDの使い方を覚えてもらおう。そんな思いの片鱗を感じます。
 すでにAEDについて御存知の方はプレイされなくても良いのです。でもよくは知らないという人はあまり堅く考えず、まずはやってみてください。どうせ無料ですし、損はありません!

とにかく興味を引く事に全力を注ぐ心止村

「これは事件なのか? 事故なのか?」
 そんなフレーズで始まるこのゲーム。ミステリーもの好きにはたまらない導入。
 でも湯けむり事件簿って……2時間サスペンスとか別に好きじゃないし……と、敬遠気味の人もいると思います。
 安心してください、穿いて…じゃなくって、とりあえずゲームのサイトにアクセスしてみてください。
 このゲーム(?)、主人公が少年漫画ばりの高校生探偵なのです! 決め台詞は「待て! まだ死んでない!」
 そしてこの主人公の名前がなんと、エイド
 エイドって!!
 もちろんこの名前はAEDからとったものだと思いますが、むりくり名前にするというツッコミを意識したこの部分でもう惹かれます。(でも多分AEDの事をとにかく刷り込みたいという想いもあると思われます。)
 ヒロインは主人公の幼馴染み。おや、どっかで聞いたような設定w 名前はココロ。
 ココロって!!
 漫画アニメでは割と馴染む名前ですが、実写だとほぼキラキラネームです。
 でも、これでいいのです。このゲーム(?)はとにかくツッコんでもらおうという要素をふんだんに盛り込んでいます。まず堅苦しいイメージを排し、プレイしてもらう事が重要なのです。サイトTOP見て終わりでは目的を果たせない。ゲームのタイトルからしてそうですし、サイトTOPの画面もそうです。仏像が胸の辺りで手を組んでいますが、指がハート(Heart=心臓)の形をしています。
 登場人物紹介も凝っていて、温泉宿や村の再開発を狙う建設会社や双方に雇われた弁護士、その内の片方は主人公と因縁があったりと、興味を惹く相関関係も作られています。おや、知り合いの刑事がいるって、どっかで聞いたような設定w しかもその刑事の名前が古谷って…(^^;)
 まずはあらすじや登場人物の紹介を見てください。それだけでプレイしてみたくなるはずです。(多分)

 ゲーム(?)は基本的に撮影されたドラマの動画を見て進行します。個人的に感心したのは、まずはここ。
 通常のゲームでは、台詞は画面上のウィンドウに表示されたメッセージをクリックなどで送り、次のメッセージを表示させるというスタイルになっています。しかしこれは地味にでもプレイヤーに「作業」を与えていたりして、無意識に負担をかけています。
 こんな感覚を覚えた人も多いと思います。ストーリー分岐などを制覇する為に何度もゲームをプレイするうちに、既に読んだ部分のメッセージをカチカチ連打してメッセージ送りするのが面倒くさいと感じた体験。
 メッセージを送るというのは案外、負担なのです。e-ラーニングとなると、その時点で面倒に感じる人もいるはずです。それを回避する為に、「ドラマ」で見せるという手法で負担を軽減しています。(意図的かどうかは分かりませんが。)ボーッとストーリーを見ていればいいのです。
 始まって1、2分ですぐに女性の悲鳴が! 事件の始まり。ワクワク。
 とはいえ、救急救命道具のAED認知が目的のゲーム(?)なので、人が死ぬという事はないだろう。救命処置で一命はとりとめ、こうなる事を仕向けた犯人を探り出す、というゲームかな? などと思っていたところ

 人が倒れている。急に倒れたらしい。登場人物全員が集まっている。みんな慌てている。
 そこで主人公、決め台詞

「待て! まだ死んでない!」

 Q1として、こんな時にまずすべき事は? という2択問題が出現。
 答えるとストーリーがまた進行、全員で倒れた人を救うべく一丸となって救命処置を行う。
 んんっ、思ってたのとなんか違う…?(^o^;)
 ちょっと進むとまたQ2、Q3、と2択問題が続きます。
 サスペンスゲームと銘うたれていたので、あちこち調べて情報を集めて推理してみたいなアドベンチャーゲーム(英訳すると違和感がありますが、日本ではそういう類をアドベンチャーゲームと呼称する)かと思いきや、実は基本的にクイズゲームなのです。(しかも答えが見当つきそうな2択問題)
 AEDや救命処置の流れを学んでもらうのが目的なのもあって、設問も難しくはなっていません。
 しかし巧妙なのが、一問ごとに短い時間制限を設けている事です。問題自体は選択肢があるので比較的難しくはないですが、時間制限が結構短いので緊迫感を生み、冷静さを求められる。こういう事態の(冷静対処などの)ちょっとした練習にもなるのです。
 ただ加えると、心停止状態は一刻の時間の猶予もない極めて危険な状態ですので、本当に時間がないという理由もあるのだろうと思われます。それを知ってもらう目的もあるのではないでしょうか。

 設問は10問あり、全てクリアすると救急車が到着して「よかったよかった」でストーリーは終了です。
 思わず「おいいいいっ!!」というツッコミ。
 なんとこのゲーム(?)、「AEDサスペンスドラマゲーム」というジャンル名や「これは事件なのか? 事故なのか?」という導入や、村の伝説、登場人物の相関関係とかまっっっっっったく内容に関係なくて、AEDで人を一人救うというそれだけが全てなのです。
 あの時のあの人物のあの怪しい視線とか何だったんだよっ! とか、湯けむり全く出てこないぞっ! とかツッコミそうになるけど、

 そんなのはどーーーーーーーでもいいのです!
 事件か事故かとか、村の再開発を巡る思惑とか、救命の場においてはどーーーーーーーでもいいのです!

 忘れてはいけないのは、これはAEDの認知が目的であり、e-ラーニングなのです。
 でもそれじゃ、せっかく興味を持ってもらうために用意した面白そうな設定とか相関関係とか台無しじゃないか! 結局かたっ苦しいつまらないe-ラーニングになっちゃってるじゃないか!と幻滅した人もいるかもしれません。
 安心してください、穿いて…じゃなくって、実はフタを開ければサスペンスでもなんでもなかったこのゲーム(?)、救命処置の段になっても面白いのです!
 事件の容疑者かと思われた登場人物たちはクセがあり、まるで喜劇やコントをみているかのような掛け合いが繰り広げられます。
 これも個人的に感心したポイントで、とにかく「つまらない」と感じさせない事に全力を注いでいます。先が見たくなるので、救命処置のクイズをこなしながら進めていきます。(ちなみに人が倒れてから画面の右下に生存確率のパーセンテージが表示され、時間経過でパーセンテージの数字が減っていきます。これはクイズに正解しても増える事はないので、一問ごとの時間ロスが蓄積していく事になります。)
 ただ途中、胸骨マッサージ(心臓マッサージ)をするシーンで登場人物が童謡の「どんぐりころころ」を歌いだすシーンがあり、いくらなんでも「なめてんのかっ!」と感じた人もいるかもしれないかなと思うのですが、ここは何らかの補足説明がないと分かりにくかったかもしれません。
 胸骨マッサージの適正リズムは「どんぐりころころ」であるというのは知る人ぞ知る結構有名な事だったりします。
 どん ぐり ころ ころ どん ぐり こっ
 おい けに はま って さあ たい へん
 結構速いテンポです。
 そしてこのリズムを覚えてもらうために劇中で歌を歌わせたのだろうなあ、という事を勝手にここに捕捉させていただきます。
 ※ちなみに胸骨マッサージはかなり力を入れないと肋骨が頑丈に守っているので効果がないそうです。5cm沈むくらいとの事。(子供の場合はまた違います。)
 肋骨はマッサージで折れる確率が高いようです。それでも医療現場では骨折よりも救命を優先するように指導されているようです。なぜなら、骨折は回復するが、心拍が復活しなかったら死んでしまうからです。
 人の骨を折るというのはまともな人であれば躊躇してしまう事ですが、命を救う緊迫した場面では覚悟が必要かもしれません。

 個人的に感心したポイントがもう1つ。
 これも意図的かどうかは分からないのですが、救命騒動を終えた後のエピローグで、救命とは全く関係のないオマケの問題があります。これも時間制限があります。そしてこの問題に限って選択肢が10個くらいあります。
 これに正解しないと主人公カップルの関係が幼馴染みから進まずに終わるというノーマルエンドで終了するのです。たわいもない分岐ですけどw
 しかしここまでノーミスで来た事もあり、ちょっと悔しくて再プレイしてしまう。劇中のどこかにある答えを探すために。実に巧妙。
 しかも文章送りではなくドラマで、さらにいえばプロローグ以外スキップできないという絶妙な仕組み。否が応でも復習する仕掛けになっているのです! なんて上手い!
 ちなみに問題の答えを間違えたり、時間経過し過ぎた場合にどうなるのかは分かりません。内容が内容だけに、それを試す勇気はありませんでした。実用目的なのでバッドエンドなんて見る気が起きません。(でももしバッドエンドになってしまった人がいたら、どのようなエンドか教えてください。)

助かる命も助からない心停止の救急現場事情

 心停止が起きた場合、1分1秒が命取りとなる時間との勝負になります。時間が経過すればするほど生存確率は減っていきます。
 ただ、現在AED自体は普及したものの、心停止などが起きてもAEDが使用されるケースは4%ほどしかありません。
 なぜ使わないのかというと、「医者ではないので使えない」「自分のせいで人を死なせてしまうかもしれない」といった事がおそらく考えられます。
 後者に関して言えば「使っても死ぬかもしれないが使わなければ死ぬ確率が圧倒的」ですので、やはり使った方がいいでしょう。前者ですが、誤解されている人もまだ多いのですが、AEDは音声ガイダンスがあり医者でなくとも使えるようにできています。(そうでなければ病院外に置いている意味がない。)
 救急医療現場では心停止の患者の死亡例において、救急車が到着するまでの間にAEDが使われていれば命が助かったと思われる例がかなり多いそうです。もちろんAEDを使えば必ず助かるという訳でもないし、AED使用が該当するケースばかりではありませんが、それでもやはり「やらないよりはやったほうがいい」のです。AEDが診断解析も行うので不必要に心配する事はありません。
 そして忘れてはならないのは、「心止村湯けむり事件簿」でAEDを使うまでの流れを覚えたから大丈夫! と安心できる訳ではないという事。
 いざその場面に遭遇したらパニックになる確率は高いはずです。覚えた事が出てくるかどうかも分かりません。でも前述のとおり、心停止したら1分1秒が命取りです。
 その事を意識しておく事、いざその場面に遭遇したらまずは冷静に努めるという事を意識しておく事、シミュレーションなどが大事なのだと思います。自戒も兼ねて記述。

 いろいろ結構書きましたが、とにかくツッコミだらけで、しかし素晴らしいつくりのAEDラーニング、これを機に是非たくさんの人に知ってほしいなと、この記事を書きました。
 面白いのでプレイしてSNSなどで拡散してください^^

・心止村湯けむり事件簿(パソコン、スマートフォン両対応)
http://aed-project.jp/suspence-drama/

・心止村湯けむり事件簿 登場人物
http://aed-project.jp/suspence-drama/character.html

・日本循環器学会
http://www.j-circ.or.jp/

・減らせ突然死プロジェクト
http://aed-project.jp/

・AEDについてのQ&A(おすすめ)
http://aed-project.jp/images/index/faq.pdf?v=qYea586_U9s

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