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桜が恐ろしい。春の魔力。

今年も春が来た。
私は春が怖い。

空がぱあっと明るくなって、
優しい柔らかな表情をしている。
でもその優しさの中にとんでもない魔力をひそめている。

桜の恐ろしさ

桜は儚くて美しい。でも、美しすぎて恐ろしい。

さっきまで閑散としていた世界に、
命を爆発させるかのように咲き誇る。

しかもその晴れ姿は、一週間ほどで儚く散る運命だ。

その短い間に見事に生き抜いて散っていく様から、生々しい「命」と「死」を同時に、強烈に感じ取ってしまう。

そんな桜を見ていると、自分もいつかは散りゆく運命であり、
刻々と終わりは近づいていることをまざまざと自覚させられる。

何より、見事に綺麗すぎる。
あんなものこの世のものじゃない。
何か天国に近いところの景色で、
魔力を持って現世にやってきたと言われた方が納得がいく。

あんなに綺麗なのに、見ていると悲しく苦しくなってくる。
綺麗すぎるものは恐ろしい。


春の魔力

春になると、動物たちがいっせいに動き出して、
「生」を感じる瞬間が増えていく。

それは人間も同じで、
外に繰り出し新しいことを始め、希望に浮足立つ。
春になったというだけのことなのに。

みんながみんなあまり意味もなく明るく浮足立つ様は、よく見てみると恐ろしい。
まさに春の魔力だ。
「え?急に何?!どうしたの?!」
と不意を突かれたように動けなくなるのだ。

冬の穏やかな流れから濁流の世の中になって、
その流れに乗らないといけないという気分にさせられる。

「新しいこと始めないとダメかな。」
「何も変わっていない自分はこれでいいのかな。」
と不用意に人を焦らせる。

春の魔力は、人を焦らせる。
衝動を駆り立て、変化を強要する。
屈託のない笑顔で、
「お前も喜べ動け」と迫られているような気持悪さがある。

私はこの押しつけがましさがどうも怖い。小さなころから。




今、春の魔力に引っ張られて、
変化を強いられていたり、
周りの人間が変わっていくのを見て焦る人もいるだろうと思う。

でもそんなもの気にしなくていい。
だって、春になっただけのことだから。
ただ暖かくなっただけ。それだけ。

時間は一定に、
冬と地続きに進んでいるのだから、
そのまま焦らず落ち着いて歩んでいけばいい。

濁流に飲み込まれに行く必要もない。
そのままのあなたで、そのままの私で、平然と闊歩しよう。
そう思うのです。

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