マーケティングリサーチ初心者必見!アンケート設計のコツ
このnoteではマーケティングリサーチを行う際の設問をどう作ればよいのか?について紹介します。
みなさまも日頃の生活でアンケートやレビューに触れる機会があると思いますが、回答しようと思ったら設問が複雑でやめてしまった、思ったよりも長そうだから途中でページを閉じたなどの経験があるのではないでしょうか。
自分が作ったアンケートでそのような体験を回答者(=顧客)にさせないよう、気をつけるべきポイントやコツを書き残したいと思います。
調査というと電話調査や店頭調査などの対象者と対話しながら行うものもありますが、今回は最も利用頻度が高いと思われるオンライン調査を中心に紹介します。
VOCは大事だ!サービス改善のためにアンケートするぞ!と意気込むと設問から考えてしまいがちです。木を見て森を見ずの状態に陥らないよう、まずは、森から俯瞰して必要な木を育てるように調査を組み立てていきましょう。
こんな人におすすめ
マーケティング/ECの部署に配属されたばかりで、右も左もわからない方
自社の会員向けにインターネットでアンケート調査をしてみたい方
リサーチ設計を初めて行う方
この記事で伝えたいこと
回答者にとってわかりやすくを最優先に
聞きたいことは漏れなく抜けなく
得たいアウトプットに適切な回答形式を
ステップ1: 知りたいことを整理し、調査項目を決定する
アンケートを作るうえで、最初に行うことは調査で知りたいこと(仮説)を洗い出し、調査項目へと分解していくことです。
イメージが付きやすいように、具体的な流れを例を使って紹介します。コンビニエンスチェーンが時間帯ごとでの品揃え満足度を調べたいとした場合に沿って紹介していきます。
この例では、コンビニエンスチェーンが時間帯ごとでの品揃え満足度を調べたいケースとします。
店舗のPOSデータを分析したところ、過去の通例では住宅地の店舗では15時以降に入店客数や売上が上がる傾向にあったが、ここ数年では12-13時の時間帯での入店客数や売上が過去の趨勢よりも高い傾向にあることがわかった。
このことから在宅勤務の利用者増加によって、12-13時の間で昼食を購入しに来店する人が増えたのではないか、従来の商品供給タイミングでは顧客ニーズを満たせていないのではないかという仮説があったとします。
この様な仮説を明らかにする調査を行う場合には、まずは知りたいことの整理をしましょう。
一般的に調査項目は調査で知りたいこと(仮説)に関するものと回答者の属性に関するものの2つに分かれます。
この調査で知りたいことは、「利用状況(時間帯や目的商品)」、「来店時間帯ごとの品揃え満足度」が必要になり、属性で分けたいことは年齢や性別、居住地、職業等に加え「職場環境」を聞くことで回答者がリモートワーカーか否かを見分けることができます。
調査項目は、調査の目的や活用の用途に照らし合わせながら検討します。「何について知りたいのか」を大項目・中項目のように構成を細分化しながら設問へと落とし込んでいきます。
この例の場合での現状把握としては「認知」「利用経験」「利用頻度」「利用時間帯」など、「満足度」であれば「総合満足度」「各商品カテゴリごとの満足度」「不満点」「今後の利用意向」など、「情報接触」であれば「認知経路」「広告接触」「クチコミ」などが中項目になるでしょう。
こうして階層的に調査項目を整理していくことで、網羅性を担保しつつ、論理的な質問の流れを作ることができます。
また、実際に設問をいきなり作り始めると抜け漏れが起こりやすく、せっかく苦労して設問作ったのに実はあまり重要な問いではなかった。調査の用途に沿っていなかった、ということにならないように時間を掛けて整理しましょう。
ステップ2: 質問順序を意識する
知りたいことの整理ができたら、質問順序を検討します。
ここでは、回答者が答えやすいように、また回答者に先入観や思い込みなどのバイアスを与えないように配慮することが大切です。
具体的には、以下のポイントを意識しましょう。
・重要な質問は先に聞く
・話題の変化を意識させる
・過去から現在、現在から未来へと時間軸に沿って聞く
・全体から個別へと聞いていく
例えば、ステップ1のコンビニエンスストアの調査であれば、以下のような順序が自然です。
これくらいまで整理することができてから、設問を作り始めましょう。
設問の作り方によってアンケートで得られるデータが変わってきますので、ここまでのステップで整理してきた「調査で知りたいこと」を漏れなく調べるために各設問を深堀って設定していきます。
ステップ3: 適切な回答形式を選ぶ
いよいよ質問項目の回答形式を決定します。単一回答にすべきか、複数回答にすべきか、など迷う場面があると思いますが、なんとなくで決めるのではなくアンケート結果をどのように活用するかを念頭に丁寧に作っていきます。
代表的な回答形式を特徴に触れながら、メリットとデメリットも併せて紹介します。
単一回答(Single Answer)
選択肢の中から1つのみを選んでもらう方法です。YES/NOなど2つから選択するものを二項選択法、3つ以上の選択肢から選んでもらう方法は多項選択法と呼ばれます。
単一回答は、回答が明確でもっとも重視する事柄を問いたい場合に有効な回答形式で、集計・分析がしやすいというメリットがあります。
複数回答(Multiple Answer)
選択肢の中から、該当するものを複数選んでもらう方法です。「3つまで選択」のように数を制限する方法を制限回答法といいます。
複数回答は、回答者が複数の要因や選択肢を持っていると想定されるような選択肢間の優劣がつけにくい場合に有効な回答形式で、より回答者の実態や状況にあった回答結果を得やすいというメリットがあります。
順位回答(Ranking Answer)
選択肢の中から、重要度や好みなどの基準に従って順位を付けて回答してもらう方法です。
複数の選択肢に対する回答者の優先順位を知ることで、重視するポイントが明確になります。ただし、選択肢が多すぎると回答者の負担が大きくなるため、選択肢は5つ程度までに抑えることが望ましいでしょう。
マトリクス回答(Matrix Answer)
複数の質問項目に対して、同じ選択肢で回答してもらう方法です。単一回答と複数回答の両方が可能です。
質問項目と選択肢を表形式で提示することで、回答者は効率的に回答できます。ただし、質問項目と選択肢が多くなりすぎると、回答者が混乱してしまう可能性があるため注意が必要です。項目間の比較がしやすいという特徴があります。
自由回答(Free Answer)
選択肢を提示せず、回答者に自由に記述してもらう方法です。
回答者の意見や考えを深く知ることができますが、集計・分析には手間がかかります。また、回答者によって記述量や内容に差が出るため、定量的な分析が難しいというデメリットもあります。
自由回答は、選択肢では収集できない情報を得たい場合や、回答者の生の声を知りたい場合に有効です。予期せぬ意見が得られる場合も多いです。
このように回答形式は、質問内容や分析目的に合わせて適切に使い分けることが重要です。なんとなくで決めるのではなく調査意思を反映させた設計をしましょう。
ステップ4: 分かりやすい質問文・選択肢を作成する
いよいよ質問文と選択肢を作成します。ここでは、回答者が迷わず、正確に回答できるよう、以下の点に気をつけましょう。
・できるだけ簡潔に
悪い例: あなたは、店舗で提供されている商品の品揃えに関して、どの程度満足していますか?
良い例: 店舗の品揃えに満足していますか?
・誰もが理解できる言葉で
悪い例: 当該店舗の商品構成は、あなたの嗜好に合致していますか?
良い例: この店舗の商品の種類は、あなたの好みに合っていますか?
・主語、述語、目的語、定義を明確に
悪い例: 商品の品揃えは十分だと思いますか?
良い例: あなたは、この店舗の商品の品揃えが十分だと思いますか?
・1つの質問には1つの論点だけ
悪い例: この店舗の商品の品質と価格に満足していますか?
良い例: この店舗の商品の品質に満足していますか?
・答えられないことは聞かない
悪い例: この店舗の商品開発担当者は誰ですか?
良い例: この店舗で新たに取り扱ってほしい商品はありますか?
・選択肢は網羅的に、かつ同じカテゴリーで
悪い例: あなたの職業は? a) 会社員 b) 公務員 c) 自営業 d) その他
良い例: あなたの職業は? a) 会社員 b) 公務員 c) 自営業 d) パート・アルバイト e) 学生 f) 専業主婦・主夫 g) 無職 h) その他
・バイアスを避ける
悪い例: この店舗の商品は、他のコンビニよりも優れていると思いますか? 良い例: この店舗の商品の品質は、あなたの期待に応えるものですか?
ステップ5: 調査ボリュームを適切に設定する
最後に忘れてはならないのが、調査ボリュームの適正化です。スマートフォンでアンケートに回答することが一般的となった今、あまりに長い調査は回答率の低下や回答品質の悪化を招きます。
目安
・回答所要時間:10分以内
・質問数:25問以内
・選択肢数:30個以内
・マトリクス形式:縦10個×横10個以内 などが挙げられています。
もちろん、調査内容によってはこれ以上の設問が必要になることもあります。その場合は、調査フローを工夫することで、回答者の負担を減らすことができます。
回答率を高めるには、回答者の負担や不安をできるだけ軽減するよう考慮することがポイントです。以下の例を参考にしてください。
冒頭でアンケートの設問数や目安となる所要時間を明示し、取り組みやすい状態を作る
冒頭でアンケートの目的や個人情報の取り扱いについて明記し、安心感を醸成する
対象者が回答しやすいタイミングを見計らって配信・送付する
まとめ
調査票の設計は、マーケティングリサーチの成功を握る重要なプロセスです。以下のポイントを踏まえて作成することで、作業の効率化やアウトプットの精度向上に繋がります。
ぜひ、これまで調査票設計をしたことがないという方も構えすぎず、日頃から意識されている顧客視点を持ってマーケティングリサーチに挑戦してみてください。
長い記事をここまでご覧いただきありがとうございます!ぜひ、記事へのスキやnoteのフォローをお願いします!
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