雑誌編集者のキャリアを通じて鍛えた、課題解決を促す「右脳派の思考回路」を分解してみた
noteに本腰をいれると宣言して早2ヶ月。
この期間、編集会議を何度も重ねつつ、弊社コンサルティング部の"左脳メンバー"が「文章を書くことから逃げたらアカン!」と自分たちを奮い立たせながら、執筆に取り組んできました(本当は「書く」を司る脳みその領域は左脳なんですけどね)。
”左脳メンバー”がようやく一巡し、やっと"右脳メンバー"の執筆順番となり、久しぶりの長文に挑んでいます。
さて、今日のお題は「右脳派の思考回路」について。
右脳(直感的&想像力が強い)と左脳(ロジカル&科学的思考)が混在するPomalo株式会社では、月に1回「うさうさ会」と題し、お互いを理解し合うために、それぞれの思考回路をさまざまな角度から紐解く社内イベントを行なっています。
*うさうさ会とは…右脳左脳の頭文字からもじったのが始まりです。笑
そこで発表するために、自分の頭の中を整理してまとめた右脳派の思考回路とは? をnoteでも披露しようと思います。
これを書いている私の経歴を挙げておくほうが、読み進めていただきやすいと思うので簡単に紹介します。
これを読むことで、クリエイティブや企画づくりをする人、特に初心者のお役に立てたり、左脳派の理解を得られれば…と思っています。
ヤツら、感覚だけでモノ言ってね⁉️
直感や勘が優位に働く人はPomaloでは右脳派と呼ばれています。
プレゼンの際に、具体的な体験談や感動話を持ち出し、相手を共感させ、説得していくさまは、時として左脳派の人々から「アイツら、数値的な裏付けやロジックがないまま、感覚やひらめきだけでモノ言ってね?」と、とかく思われがちです。
いま、これを読みながら「そうだそうだ!」と同意した、左脳派のアナタ。
大間違いです!
なぜ大間違いか?
右脳派の頭の中を詳しく紐解き、企画を価値化するまでのプロセスを流れで追って検証していきたいと思います。
以下が「右脳派が行なっている企画づくりや事業アイディアを生み出す際の脳内プロセス図」です。
↓
これらをさらにカテゴライズすると
大きく4つの工程に分かれます。
そこでもっと単純化してまとめるとこうなります。
実はこれ、企画づくりや事業アイディアにおいてだけでなく、仕事上で問題が起きた場合や課題解決に取り組む際にも、同じ状況が頭の中で起こっています。
3つのステージにおけるそれぞれの脳みその使い方の順番を追って深掘りしていくと…?
インプットステージでは、
課題を把握したりさまざまな情報を収集しながら、過去の経験や持ちネタとの紐付けを行ったり、隠れた課題がないか、洗い出しつつ、頭の中で<課題>と<情報>の間をいったりきたりしている状態です。
この時の課題把握や情報収集は、データを細かく集めることもありますが、どちらかというとその課題の本質を深掘って、別の視点から再定義したり、再解釈したりしています。
その際に、アプローチの方法として使うのが、「現場10回」(刑事か!?)と「ターゲットウォッチング」。
ショップや街など実際の現場を何度もウォッチングしたり、グループインタビューを行って課題を考えたり、ターゲットの行動がなぜ思った通りにいかないのかを疑ったり、過去の経験値との違和感を見つけ出したりと、「個人の感覚」いわゆる右脳が起点になってぐるぐる考えるケースが多いのが特徴です。
一方、検討・分析ステージでは、インプットステージで見えてきた情報や内容を整理分類して、何から始めるのかの優先度を考えたり、着手するためのコストやプランを組み立てます。
この時、課題をもれなく書き出したり、本当の課題は何かを絞ったり、インプットステージで感じた違和感の正体に気付くために、データで得られた数字を元に考えたり……と、定量的でロジカルな作業=左脳的働きをしている状態です。
アウトプットステージでは、検討・分析ステージで出た複数のアイディアや企画の中から、優先度、実現度、ときには話題性などを精査して「やるべきこと」を決定し、それを行うチーム組成をし、コミュニケーションをとりながら企画実行や課題解決を行なっていく流れです。
この意思決定の際、立てた企画や答えが本当に成功につながるのか、他に企画アイディアはないのか、かなり悩むことがありますが、最後の最後の意思決定は最終決定者(編集長やディレクター)の「エイヤッ」「やるしかない」という理屈抜きの決断=感覚や直感に頼ることがほとんどです。
改善ステージでは、実際に実行した結果、どうなったのか、解決できたのかなど、評価を行い、改善策を立て、またインプットしながら、実行までもっていくサイクルになります。
この一連の流れを、脳みその動きで解説すると……
インプットステージとアウトプットステージは右脳で考え、検討・分析ステージでは左脳を使ってロジカルシンキングなるものをちゃんと行ない、アウトプットの段階で直感を信じて決断するという右脳的行動をとるわけです。
企画づくりの中で脳みそはどう働いている?
上記で、脳みそ内思考をあーだこーだと分析してみましたが、もしかしたらわかりにくいかなと反省し、実際に企画づくり当てはめて、順を追いながら考えてみることにします。
1.インプットステージこそ右脳派の実力の見せどころ
ターゲット像をもとに情報収集を行い、仮説づくりを行います。
企画づくりや課題解決は、
だれの、どんな気持ちを、どう動かすか
が大前提ですから、
最も大事なのが「だれ」に当たるターゲットであり、そのターゲットの情報収集が必要になります。
だれの心を動かしたいのか、というターゲット像が明確であればあるほど、そのターゲットの欲望や憧れ、ロールモデル、願い、悩み、コンプレックス…を炙り出していくことができます。
ただし、間違ってほしくないのは、ターゲットの輪郭が重要なのではなく、そのターゲットが、なぜその悩みや願い、欲望をもっているのか、という「なぜ」の部分が一番重要で、その「なぜ」に対して仮説立てをすべきです。
それができたら、実際のターゲット像の行動特性や心理特性の仮説が正しいのかを検証するために、
・顧客観察
・グループインタビューやディスカッション
など情報収集を行います。
顧客観察は、クライアントの店舗や、ファッション領域であれば実際に渋谷や青山へ出掛けていきます。
余談ですが、ファッション誌において、新人編集者はスナップ担当として渋谷や表参道に張り込みに毎月行かされることが多いのですが、なぜいくかというと…?
ターゲットと思われる人たちが、何を着て、どんなメイクをしているのか、どんなものが流行っているのかをショーウィンドーも含めて定点観測することで、時代の空気感を肌で理解したり、ターゲットとなる人たちがどの店に行列をし、街角で何を食べたり飲んだりしているのか、その移り変わりを読み解いて、ニーズを合わせにいく訓練をするという目的のためです。
グループインタビューやディスカッションは、ターゲットのリアルな言葉を実際に聞くことで、ターゲットの心理特性や行動特性の仮説が当たっているのかどうかという答え合わせを行います。
ところが、この答え合わせ以外にも、本来予想していなかった、もしくは全く認識していなかった声も上がり、ふいに「足りない視点」や「面白そうなスキマ」を思いつくことがあります。
これは、ディスカッションを聞いているうちに、次第に自分の考えが整理されたり、他の人の話の中に突破口となるヒントがあったりするからです。
自分の中で醸成されてきたクライアントの悩みや商品と、リアルなターゲットとの接点といった問題意識を何かが刺激した瞬間にパッとひらめくといった感じで、これこそが、論理的に導き出されるものではなく、「右脳」らしい思いつきの代表例といえるかもしれません。
2.検証・分析ステージの頭の中はどうなっているのか?
ここは、右脳派であっても、かなり左脳中心にモノごとを捉えています。
インプットステージで仕入れた情報や課題をリストアップして、
重要なものとそうでないものをロジカルに仕分ける
立てた仮説を検証し、優先順位をつける
コスト範囲内で何ができるのかを計算、分配
セッション数やコンバージョンなど数値結果アップのために見込めることを羅列
スケジュール
など、定量的なものを掛け合わせて、拾い上げるモノと捨てるモノを区別し、実行までの進行を組み立てます。
このときに、
グループインタビューやディスカッションで得たひらめきや勘が、ロジック的に成り立つのかどうかといった、いわば、右脳と左脳を行ったり来たりしながらグルグル駆け巡り、右脳左脳が入り混じって導き出していくことが多いのが脳みそ内の特徴です。
3.右脳が脳みそ内を再度占有し始めるアウトプットステージ
決定や実行が伴うアウトプットステージに行こうすると、右脳が再度ムクムクと脳みそ内を占有してきます。
たとえば、いくつか出した企画の中でも、こっちのほうがいいとか、過去こういうので結果を出した記憶がある、こっちのうほうがウケる…など、感覚値や経験値で最終決定することが多かったりします。
また、頭の中で、ユーザーとモノやコトの接点を考え、ストーリーに落とし込んで伝えなくてはならないため、コンテクスト(文脈)を考えながらストーリー化しやすい、しにくいなども右脳を働かせながら決定することもあります。
右脳を軸にしながら、左脳的ロジックの結果を考慮しつつ、実行段階に移していくような感じです。
結論
右脳派は感覚だけでモノを言っているわけではなく、インプットした情報をもとにひらめきを大事に考えを整理し、ひらめきをちょっとだけ理論武装するために左脳を使いながら提案しているのです。
「右脳力」を鍛える3つのアプローチ法
では、この右脳力、鍛えられるものでしょうか?
わたしの経験から、右脳の筋トレにぴったり!なものを3つピックアップしてご紹介します。
右脳力のとっかかりは
センスを磨くことから始めてみよう
よく「音楽のセンスがいいね」「土地勘がある」というシックスセンス的なものは生まれつきもっているような言い方をされます。
しかし、
センスや直感のほとんどは、努力で身につき、しかも意識した瞬間から身につくものだと思っています。
つまり、センスとは、意識して、どれだけそこに時間を費やしたか、経験や思考の結果です。
(*生まれつき耳がいいところに音楽環境があり、人より音楽的才能がずば抜けるなど生まれ持った「ギフテッド」的ケースも稀にあるので「ほとんど」と表現しています)
例えば、わたしの場合、ファッション誌編集者として経験を積む過程で、国内外関わらず何千枚、何万枚、何十万枚もの写真を見てきました。
光やトーン、モデルや静物の構図、色合い…など、さまざまな知識と一緒に脳内の引き出しにストックさせておいて、実際に自分がカメラマンにディレクションする際や必要な場面で、その引き出しから最適解を取り出し、どういう光や構図で撮りたいかを説明できたり、写真の良し悪しもパターン化して解説できる、その能力がセンスの正体だったりします。
もしもいま社会人2〜3年で、だれも考えつかないアイディアや言葉のチョイス、デザインやコピー、音楽やアート、プレゼンや営業……など、何かのジャンルでセンスを身につけたいと思ったら、自分にはセンスがないと嘆かずに、今この瞬間から、とにかくたくさん見て、経験や知識を身につけ、脳内の引き出しに蓄積することです。
意識した瞬間から身につきますので、今日から自分が研ぎ澄ませたいセンスは何かを探して、意識してみてください。右脳が目覚めてくるはずです。
モヤモヤや違和感を無視せずに
観察して言語化してみよう
たとえば新しい商品を見たり、体験をしたときに、一瞬で欲しいとか、デザインがカッコいいとか、高そうだとか、売れそうだとかさまざまなことを思います。
そんななかで、自分の中でなぜかしっくりこない、どこか腑に落ちない違和感があったり、妙に心に残ったり、イラッとした経験は、だれでも一度はあるのではないでしょうか?
そのモヤモヤやイラッとした感情を感じたら、それこそが右脳が動いた証拠です。
例えば、キ◯チョーの「Gがいなくなるスプレー」。
購入後、パッケージを剥がすとシンプルな白に変わる「脱皮缶」を開発し、売り上げが1.7倍になったそうです。
これは、消費者の「Gを見るのもイヤなのに、缶の絵で強調されるとイラッとする」ーーそんな感情を商品に反映したことが成功へとつながった好例です。
世の中には、そんなモヤモヤや違和感、イラッとした感情を解決に導いて成功した事例は数限りなくあります。
自分の感覚とのズレから起こる違和感を、どんなに些細でもスルーせずに、「なぜそう思ったのか」を書き出し、言語化していくことで、その違和感が新しい発見や流れにつながることがあります。
○○○×◾️◾️◾️
掛け合わせて再定義してみよう
わたしは編集者として長年働いてきました。
そこで身につけたのは、ゼロから1を生み出すクリエイティブな能力ではなく、1を2や3にしていく能力です。
つまり、すでに世の中にあるモノや人、場所、体験にスポットライトを当て、改めて魅力的に見せる能力、つまり再定義してみせるアイディアです。
このアイディア出しに用いるのが、○○○×◾️◾️◾️の掛け合わせ。
すでにこの世にあるものを新しく見せたり、ワクワクするものに変えるには、掛け合わせが肝心です。
人×服の変遷、コスメ×レシピ、セレブ×失敗談、リアル女子×ショーウィンドゥ、読者×発信ラボ……など数限りなく企画にしてきました。
こういった掛け合わせは雑誌における企画だけでなく、ビジネスを打開していくときにも有効な考え方です。
洋菓子の台頭で人気が落ち込んでいた大福に「いちご」を掛け合わせることでブームをつくったり、誰もが着るTシャツと人気アニメを掛け合わせ完売に持ち込んだり……。
掛け合わせの変数が大きければ大きいほど、人は意外性に驚き、人気に火がついたりします。
右脳を鍛えるために、この掛け合わせをゲームのように行なってみることで、新しさや驚きが生まれます。
いかがですか?
他にももっと右脳を鍛える方法はありますが、まずは、簡単にできる3つをご紹介しました。
日々の訓練次第で、右脳は確実に磨かれていきます。
右脳が鍛えられれば、アイディアやひらめきが少しずつ生まれるようになるはずです。
この訓練を繰り返して、面白い企画やビジネス上の課題解決をしていってください。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
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記事を書いた人
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