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農園が日本を土地問題から救う?(2/2 都市農地編)

※前回記事で、デトロイトについて当初「劇的な復活を」と書いていたのですが、そこまでまだ復活していない・農園が直結しているわけではないというご指摘をいただきましたので、前回記事を少し修正いたしました。初回記事は気持ちがはやって、少し勢い余って書いてしまいましたが、客観的にを心掛け、落ち着いて書いていこうと思います。

今回は都市農地の可能性について書いてみたいと思います。
2020年代は、農が織り成す素敵なまちへの転換点になるかもしれません。

日本の都市部、たとえば首都圏では埼玉、千葉、神奈川のような郊外においては住宅地のなかに農地が織り交ざって残っているところが多くあると言われています。実際にgoogle mapなどを見てみると、確かにそうなっています。

たとえば和光市駅まわりなど、茶色に見えるのが概ね農地のはずですが、たくさん混ざっています。

こうした都市部(厳密には市街化区域)の農地は所有者の意向により、「生産緑地」といわゆる「宅地化農地」の2種類に分けられます。

宅地化農地については、いずれ開発されることを前提とされ、宅地並みの課税がなされます。

一方、生産緑地については、30年間そこで自分自身が農業を続ける(=貸せない)ことを前提に、固定資産税の減額や、相続税の納税猶予などの措置が認められ、農地として保全することがしやすくなります。

この生産緑地の優遇制度は1992年にできたため、当時生産緑地の指定を受けた農地は、2022年に一斉に指定解除される可能性があります。そうすると大量の生産緑地が一斉に土地市場に出ることになり、地価が下がるかもしれません。
(この2022年問題についてより詳しく知りたい方はアグリメディアさんのブログなどがわかりやすいです)

そこで、2018年に生産緑地法が改正され、以前より小さな面積の農地も生産緑地指定を受けることや、敷地内にレストラン等を建設することが可能になったほか、30年経過後も10年ごとに指定を更新することができるようになりました(特定生産緑地制度)。

依然として「もう農業は続けれられない…」と思った農家の方は、生産緑地の継続はせず売るしかないのか、となるかもしれません。しかし、ここで効いてくるのが同じく2018年に併せて施行された「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」です。

これによって、農家でない市民やNPOなどが生産緑地を借りて、農業を行ったり、市民農園等を開設することが可能となりました。
(詳細は農水省のページをご覧ください)

こうして、農地をまちに残すことができ、さらに農業の振興や、市民農園やコミュニティガーデンの創設を通した社会活性化(健康への寄与、趣味・生きがい創出、環境教育etc)につなげていくことができます。

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↑東京都日野市のせせらぎ農園さん。みんなで育てた野菜は、みんなで分け合って持って帰ることができます。たくさんイベントを行ったり、近隣の幼稚園や小学校、障がい者施設と連携して、色々な取り組みも行っています

いままでは地主である農家を手伝う「援農」といった形で行われていた、農地利用型のコミュニティガーデンはありましたが(冒頭および上の写真の、東京都日野市にあるせせらぎ農園さんなど)、これからは「借りて責任持って使う」という形でできるようになるのは非常に良いことだと思います。農家の方にとっても、確かな契約のもと貸し出せる仕組みができ、安心して他の人に大事な土地をゆだねることがしやすくなりました。

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↑こちらは宅地化農地の利用ですが、東京都国立市のはたけんぼさんです。農家民泊や訪日客・留学生向け文化体験、古民家コミュニティスペースと連携した子育て事業も組み合わせた面白い取り組みがなされています。こうした農園の開設も目立ってくるようになるかもしれません。

直接的に莫大なお金を生み出すわけではなく、土地の継承問題など、すべてがすべて、市民農園やコミュニティガーデンなどの農園で解決されるわけではありませんが、農地を残し、地域社会にも貢献する新たな選択肢ができたということを是非多くの人に知っていただけたらと考えています。

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はたけんぼさんの動物たち、可愛いので是非会いにいってみてください。

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