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【創作小説】猫に飼われたヒト 第34回 コスモス畑の先に

レックスとキャロルは昼食を終え、研究所に向かった。

研究所には、新入研究員のメガネしかいなかった。ぽつんと1人席に座るメガネに、レックスは驚いた。

メガネはひとりぼっちである理由を説明した。

「新人を1人放っておいて社員旅行だなんて信じられない。すまなかった。今日は私も夜までここにいるから」

キャロルもレックスの言葉に同意した。
「そうですよ。それに、なんでレックス先生もお呼ばれしなかったんでしょう」

「彼らは断固として私をここの一員だと認めたくないようだね…」

「なんだか複雑な理由がありそうですね」

「はは…君が入ってくれて、少しでもここの雰囲気が変わるといいんだが」

メガネは眉をひそめた。
「ここに入る?所長、こちらは?」

レックスはキャロルの紹介をした。

「よろしくお願いします、ノックスさん」

キャロルの笑顔に、メガネの心は撃ち抜かれた。
「…あ、ども…」

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研究員たちを乗せたバスはコスモス畑に到着した。

ネイサン「はい!みんな着いたよ〜。自由に写真撮っちゃっていいからね〜」

研究員たちが続々とバスをおり、コスモス畑に向かっていく。

ティオ「あんまり期待してなかったっすけど、綺麗っすね」

ネイサン「だろう?ここは四季折々いろんな花が咲く名所なんだ。ついこの間まではひまわりが咲いていたんだよ」

ティオ「たまにはぼんやり花を眺めるってのもいいもんっすね」

ネイサン「実は、アウラさんもここがお気に入りの場所だったらしいよ」

ティオ「へえ。でも俺らって、アウラさんと一緒に仕事したことねえんっすよね。アウラさんが失踪したのは1月。俺らが入所したのは4月っすから。実質、主任がボスみたいなもんすよ」

ネイサン「ああ…本当にその通りだね」

ティオ「アウラさんて、どんな猫だったんすか?」

ネイサン「……まあいいじゃないか。今日くらいは研究所のことは忘れよう」

ティオ「先輩がアウラさんの話を始めたんじゃないっすか…」


フルーメンもバスを降り、コスモスを眺めた。

しかし、すぐに研究員たちの群れからは離れ、1人林の中へと入って行った。

…アウラさんも、休日になるとよくこの花畑に来ていたという。

フルーメンはどんどんと林の奥深くへとわって入っていった。…すると。

大きな古びた廃墟が見えてきた。

「…なんだこれは」

中へと入るフルーメン。

半崩壊のそこそこ大きな建物。火事で燃えたような痕が残っていた。

奥へと進んでいく。すると…


「…助けて」


そこにいたのは、長い黒髪の人間だった。

次回に続く

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