【創作小説】オヒシバさん 第2回
次の日。
ナズナはシェルターの中で種の入った袋を眺めていた。ぼーっと眺め、そしてそれをポケットにしまった。
ナズナはシェルターを出てオヒシバとの待ち合わせ場所へ向かった。
除草作業中、ナズナはオヒシバに質問した。
「オヒシバさんはずっと雑草を抜いてきたんですか?」
「…ああ。カシが始まってから、今まで10年やってきた。だが、たかが10年だ。俺は身体こそ30歳で止まってるが、もう200年近く生きてる。…お前はいくつなんだ?」
「14です」
「いや、身体の年齢じゃなくて、本当の年齢」
「14です」
「…まあいいや。わざわざ聞くこともないか」
「オヒシバさんはなんで種を使わず、雑草を抜いているんですか?」
「…さあ」
オヒシバは考えを巡らせるように青空を見上げ、そしてまた口を開いた。
「強いて言えば、大昔に人間が破壊したこの大地への、償い、かな。カシした人々の雑草を抜いて、綺麗な大地を地球に返したい…のかもな」
「償い、ですか…」
「…俺自身よく分からないんだ」
「え?」
「…分かったら、種を飲もうと思ってる」
「そう…なんですか」
すると、今度はオヒシバが尋ねてきた。
「お前はなんで種を飲まず、俺の手伝いをしているんだ?」
「私、ですか?…私は……」
ナズナも考えを巡らせようと青空を見上げた。澄み切った青空はどこまでも続いていた。雲一つないまっさらな空。
ナズナはオヒシバを見た。
「…なんででしょう…」
次回に続く
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