![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/132224953/rectangle_large_type_2_ecd4c5e63bf2317ae99b845f5478bb5a.jpg?width=800)
【創作小説】猫に飼われたヒト第30回 決意
2530年の12月某日、18歳になった私はアウラさんから呼び出された。
「フルーメン」
「はい、なんでしょう」
「お前は、日頃から研究所の中心となって職務を全うしてくれている。だから、お前を主任に命じ、私の右腕となって今後も役立ってもらおうと思う」
「…本当ですか!」
「ああ。今後は外部との連携や研究所の研究目標についても一緒に相談し、人間の未来のために一層精進していこう」
「ええ…もちろんです!ありがとうございます!」
ようやく、アウラさんに認められたと思った。私は胸がいっぱいになった。
苦労して育ててくれた天国の父さん母さん。やっと、私もアウラさんと同じステージに立てたんだよ。そう、思っていた。
だが、その数週間後のことだった。
私はアウラさんの異変に気がついた。
いつもとはまた違った、険しい表情をしていたのだ。
「アウラ所長。いかがされましたか」
「…いや、なんでもないさ」
「でも…」
「なんでもないと言っている。私の言ったことが素直に聞けないのか」
「……私はあなたの右腕です。何かあればなんでも相談してください!」
「うるさい!お前に私の何がわかる!1人にしてくれ!」
それからアウラさんは、その険しい表情のまま、この研究所から姿を消した。
あの時、アウラさんは私に何を隠していたのか。
私は研究所に入所してからずっと、アウラさんに尽くし、サポートしてきた。
アウラさんの命令を誰よりもこなし、アウラさんの期待に応え、アウラさんのこのデスクを整頓してきたのは、この私なのだ。
…それが、姿を消してから、次期所長に選んだのが全くの無関係者である猫だなんて。しかもそれが、アウラさん直々の任命だって?
私はアウラさんの右腕だったのだ。なのに。なのに。なぜ私が所長ではない。
私は所長席のデスクに触れた。
ここに座るのは、私だったはずだ。
あの時アウラさんは、何を思っていたんだ。
…私が丁寧に整頓してきたアウラさんのデスクの面影も、アウラさんの仕事用のメガネも、アウラさんとともにどこかに消え、今では別の猫がここに座っている。
アウラさんがいなくなってから、研究員の募集人員を増やし、今は誰もが程よい負担で職務に勤しむことができている。この環境を作り上げたのは私だ。この私なのだ。私が認められるべき人材なのだ。
「___任、主任!」
我に帰り、はっとするフルーメン。
「主任、今度の社員旅行の場所なんですが、研究員たちで意見が割れていて…」
「…はあ。どいつもこいつも私の気も知らないで…」
「え?」
「いや。なんでもない。そんなこと、私に聞かず勝手に決めろ。私はどこでもいい」
「ですが…」
「いいから」
「…分かりました」
研究員が去り、フルーメンは1人レックスの席を睨みつける。
アウラさん。私はあなたに直接聞きたいことがたくさんある。
いつか絶対、あなたを見つけ出してやる。
次回に続く
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?