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兼近大樹『むき出し』を読んで


※ ネタバレ出てくるかもしれませんのでご注意ください。



ティーチャー兼近ことEXIT・かねちの処女小説

『むき出し』

まずはかねち、忙しい中での執筆活動お疲れさまでした。
心からお祝い申し上げます。
夢が叶って良かったね、本当におめでとう。


「本を出版するのが夢」というのを彼が口にしていた頃から、いつか私もそれを読める機会があるのかなぁとふんわりとは楽しみにしてきた。
なのにお仕事をセーブして執筆活動に本腰を入れると聞いては勝手に寂しくなり、あの()文藝春秋さんから小説を出版する運びになったと聞いては心配になり、そして全国の幾多の書店で話題になって発売すぐに重版になったと聞いては感激で泣き崩れ…
チャラハッピーなお笑い芸人を推していたはずの私の情緒は乱れまくりだった。

だって…自伝的小説でしょ?
彼の生きてきた道筋を、もしかしたら心の内側までをも覗き見れてしまうかもしれないんでしょ?、と…
そんな私は、いざ手元にその尊いかねちの御本がやって来ても、頁を捲るのを躊躇してしまった。

ネオ渋谷系チャラ漫才師、と自ら名乗って活動していてファン層も広い彼だけれど、私が彼に惹かれる理由の一つは
「光の裏にある影」

EXIT・兼近大樹と言えば、華があって底抜けに明るいキャラクターで売っている。(売っている)
でもそれと対照的に見え隠れする、拭い切れない暗い闇。

その正体をまざまざと見せつけられるのかと思ったら、何だか急にしんどくなったのです。(また情緒乱れてる)



小説の主人公・石山は、私が想像もつかない程の貧困や教育格差、社会から外れて生きてきた男で、過酷な境遇の中で幾多の困難や挫折を乗り越え、やがて人気芸人へと駆け上がる、という物語だけど…
それはそれは、私が今まで応援してきているEXIT兼近大樹、かねちの人物像そのままだった。
「どうやって読んでもらっても構わない」
とかねちはインタビューで言っていたけれど、彼が今までメディアとかで面白おかしく話してきたエピソードと重なることばかりだったし、石山の信条や世界観は、私の中ではほぼかねちだった。

幼少期から周りを手こずらせてきた彼は、酷く荒んでいていつも暴れて何かに立ち向かっていたが、石山の心の声が沢山記されていることにより、彼がただ粗野な人物という訳ではなく、彼の中には確固たる正義感や一貫した倫理観があり、きちんと筋が通っている事が解る。

「知らない」「教えてもらえない」ことの怖さ、「どうして自分だけが不幸なんだろう」という劣等感や葛藤、石山はそんな不遇の時代の中で色んな人と関わるにつれ、自分を見つめ、家族を見つめ、友人を思い、目の前に居る相手の生きてきた背景までをも思うことが出来る人に成長していく。

ここで少し別の話。
ある分野で統計を取ってそのグラフの中で一番多いところ=普通、に分類されるならば、私はそこに入ってこなかったんじゃないかな、と思うことがある。

「変わってる」「普通じゃない」
とね、よく言われるから…
でもそうやってラベリングされることがずっとしっくり来なかった。


何が、誰が『普通』なの?
『当たり前』ってどこが『当たり前』なの?


別に自分が非凡って訳じゃないけれど、その統計の一番多いところ=『普通』に所属したいとずっと思ってた。
でも『普通』に憧れていた自分でさえ、他の人からしたら十分過ぎる位の『普通』を持ち合わせていたのかもしれないし、他人にとっての『普通』が私の描く『普通』とは限らない。

『普通』って何だろう…
『当たり前』って何だろう…


『普通』って『普通』じゃなくて『当たり前』って『当たり前』じゃなく、とてもありがたいことだと思って(だから『有り』『難い』なんだもんね)ずっと生きてきた。
だから、

「『当たり前は当たり前じゃない』」

をかねちの口から聴いた時は、良い意味で衝撃を受けた。
なんて私が言うことも烏滸がましいけれど。
でも、私よりも若い青年←がこんな見解を持っているなんて…ととても感銘を受け、少し泣いた。


この小説の副題とも言うべき

「あなたの『普通』は当たり前ですか?」
(宣伝ポスターに直筆サインで書かれてましたね)

に、ハッと心を掴まれる人は多いだろうけど、誰しもがそれをいつも念頭に置いている訳じゃないと思うの。
でもかねちは、どんな事でも相手が誰であっても、常にそういう風に考えながら生きているんだろうなと感じる。


かねちの発言に垣間見える死生観や彼的哲学で

「死ぬ意味も生きる意味もない」
「人生は死ぬまでの暇つぶし」

というのがあり、とても印象に残っているのだけど、彼の事を好きな身としてはそういう刹那的な危うい感じが儚くどこかに消えてしまいそうに思えて、何とも言えず不安になることがある。

この小説の中で、かねちの「影」の部分の裏付けが取れるのかな?
怖いもの知らずで生き急いでいるかのように見える彼の「影」の部分が描かれているのかな?と…

でも壮絶な物語ではあったけれど、この『むき出し』を読み終えた後は、心がポカポカと温かく、爽快感すら覚えた。

それは、作品全体に石山の、かねちの、
「生きる」
という想いがずっと見えていたからだと思う。
彼の息吹を、生命の匂いをちゃんと感じたから。

人生理不尽なことがあって腐ったり間違えたりしても、生きていさえすれば何だって出来る。
人生はいつからだってやり直せる、という兼近先生からのメッセージを受け取った気がした。

「人に優しくなれる本」

とかねちが言っていたことに、改めてジーンとして、鼻の奥がツンとした。

石山くん、かねち、、、
どうかどうか、幸せになって、と願わずにいられない。


他者に見せるスイッチONなEXIT・兼近のスターで煌びやかな顔
スイッチOFFな人間・兼近大樹としての秘めたる部分

外へ外へとエネルギーを向けるのはサービス精神旺盛なかねちにとっては容易なことかもしれないが、逆に内なる心の声を曝け出すこと、過去を思い出して自分の中の自分と向き合うことは、果たして辛くなかったんだろうか。

暴露の気持ちや懺悔の気持ちも、かねちの中にはあったのかな?
だとしても、かねちは人生を変えるキッカケになってくれた本を、いつか自分も書いてみたいという目標を持ってただただ前へと進んできた。
自身のこうした経験が、同じく辛い環境にいる人たちへ何かしらのエールとして届けられたら、と。

パブサしたら、ファンじゃない方も沢山本を読んでくれてて、素敵な感想呟いてる方が沢山いらっしゃって、また泣けた。

ちゃんと「揺らぎ」起こってるよ…
かねちの目指す「分断をなくす」に一石を投じられてるよ…


どこまでも他人本意で優しい、彼の積年の熱い想いがギッシリ詰まったこの本を、色んな境遇の、色んな世代の、もっともっと沢山の人々に読んで欲しいと強くお勧めします。


そしてこんな終盤に来てから書くのもアレですけど…
かねちの描写が独特でとてもエモくて美しくてですね…
序盤の時点で「うわっ!」て思いました、勿論良い意味で。さすが沢山本を読んでいるだけあるわ、良いわ~って!
「頁捲るのを躊躇して…」
とか言ってたくせに、スルスルと読める読める笑
私はファンなので彼が読書家で語彙力や表現力に長けているのを知ってるけれど、あのテレビのイメージだと思ってる人が読んだら驚くんだろうか、と想像するだけでもワクワクした。


私は
「地球から離れたり」
のところとか特に好き。
良かったら探してみてください←





かねち、これからもずっと応援してるからね。

大好きだよ。





      ***




もうね、想いをうまく表現出来ない…
感想文になってないし汗
でも推しフィルターじゃなくても本当に良き本だし読みやすいから、是非ぜひ手に取ってください!!!




あぁ、もっと秀逸な文章力がほっし~(かねちの初期ギャグ笑)



稚拙な長文失礼いたしました。
最期までお付き合い頂いた方は読んで頂きありがとうございました。



   【  end  】

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