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それはNHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』から始まった

NHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』の再放送が2021年1月26日から始まった。(当初のアナウンスでは1月25日からであったが、国会中継の都合で翌日から再放送開始となった)

これは本当の偶然なのだが、読売新聞夕刊で2021年1月20日より『レコード発掘の流儀』と言う500字程度の連載をすることになり、全四回分の原稿の締め切りが12月19日ですと言う事でそれまでに全て書き上げたわけだ。

書き上げてから年明けを迎え、楽しみにしている夕方の朝ドラ再放送枠、この時は2006年度放送の『純情きらり』が終了しようとしていた。実は『純情きらり』は初めて観たのだが、戦前から終戦直後の音楽界をテーマにしていて、昨年の朝ドラ『エール』を意識して再放送されたのかもしれない。簡単なあらすじとしてジャズピアニストとして成長する、とあったので戦後どんな活躍をするのかと思ったらなんと終戦直後にヒロインが結核で死んでしまった。こう言う終わり方の朝ドラも新鮮だなと思いながら最終回を観ていると「1月25日より『花子とアン』を放送します」とテロップが流れた。なんという奇遇だろう!思わず叫ばずにはいられなかった。それは前述の連載原稿の第二回目に『花子とアン』について触れているからだ。しかも、掲載日は再放送開始の翌日の1月27日である!(前述の通り、最初は25日だったが国会中継で1日伸びた。更に1日伸びていたら完全に一致してしまうところだったのだ)

※ただし、ネットニュースを検索すると12月初旬には再放送との報道がされている。個人的に情報キャッチが遅かっただけではあるが。

NHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』とは因縁浅からぬものがある。と言うよりも僕の制作したCDの中では人生で最大にヒットした作品を生むことになったテーマのドラマである。

遡ること2013年6月25日、僕はつらつらとNHKのニュースを眺めていると次の朝ドラのヒロインについて伝えていた。「次は村岡花子をテーマにしてヒロインは吉高由里子さんです」と。

最初はボーっと聴いていたのだが、或ることが頭に浮かんだ。「村岡花子の本人自作自演のレコードってウチに何枚かあるよな」と。現物はすぐ出せないが当時のレコード総目録を紐解くと半分以上のレコードが手元にあることになる。ははん、これはCDとかに出来るかなとおもむろにスマホを手に取り、当時別件で仕事を一緒にしていたユニバーサルミュージックの担当さんに電話。

「はい、どうしました?」

「あのね、次の朝ドラが村岡花子がテーマなんですって」

「はい、それで・・・」

「ウチに本人が当時朗読したレコードがあるんですよ、それをCDにしたらいいんじゃないかと思い付いたんですが」

「えっ、何を言っているかよく判りませんが、ちょっと待ってください(と、キーボードを叩く音とともに恐らく上記の記事に辿り着いたと思われ)あっ!こここれは!!!!!!!!」

(以下省略)

と言う訳でユニバーサルでCD化の企画が通った。そりゃ朝ドラ連動企画ですからねぇ。通りますよ。しかし、まずこれはご遺族に連絡しなきゃならないわけです。村岡花子は1963年(昭和43年)没なので録音自体はPDでも自作した台本には著作権がある。まず第一の関門である。もちろん当時ネット上で「赤毛のアン記念館・村岡花子文庫」にアクセスすることは出来ても、発売させていただく交渉をするのはハードルは高かった。高い気がした。お分かりいただけるだろうか。

しかし、奇縁と言うのはあるものでユニバーサルの社内、しかも直接の制作関係の方に村岡花子のご遺族である村岡恵理さんのご友人がいたのだ。そんなわけで直接連絡していただき難なく許諾をいただくことが出来た。もちろんNHKの公認商品としての手続きも進められ、オフィシャル商品としての体裁は整った。

収録内容について僕の手持ち以外の音源を追加すべくコレクターの皆さんにご協力いただいたり、金沢蓄音器館にもご協力いただいた。2014年4月の放送開始までに着々と準備は進められたのだが。。。

発売日は2014年4月16日、さてイニシャルはどのぐらいかなと担当さんに電話を。

「どうですか?」

「イニシャルが振るわなくて今なら発売を止められるとか言われちゃって」

「ええええええええええ!!!!朝ドラですよ!!!!!」

「朝ドラですよねえ!!!!!!!!!!!!ともかくこのまま発売しますが、番組が始まって話が進めば動くと思います」

そう、このCDは村岡花子が壮年になり、子供たちのために自作や翻訳した童話をラジオで放送した頃の音源なのだ。つまり、朝ドラにありがちな幼少期のエピソードではマーケットに繋がりにくい、これはわからないでもない。

ともかく、レーベルとしてもプロモーションをかける訳だが、当然ながらNHKでお呼びがかかるわけだ。ネタとしてもNHK向きだし。最初に連絡があったのは確か朝の報道番組のスタッフからだった。次に午後の番組のスタッフ。相互ではやり取りはしないらしく、先に放送された午後の番組では僕の出演はないが取材された情報が取り上げらえた。その放送が終わった直後に着信があり「では、朝の番組ではご出演いただきます!」と。つまり午後の番組が何を押し出してくるかチェック待ちだったわけだ。

何れにしても全国放送の面目躍如たるNHKである。村岡花子のレコードがあると言う扱いで出演して瞬く間にCDは売れ始めた。最終的には朗読CDとしては異例の1万枚を売り上げたことになり、ニュースにもなった。

後半につづく(予定)


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