2019年度 慶應義塾大学 文学部 小論文 模範解答

設問I:320~360
社会全体において能力主義は進展しているのか、それとも幻想なのか。筆者はこの問い自体が空虚だと指摘する。なぜなら、ある能力を測る基準は多様かつ文脈依存的であり、しかも当の能力がそうした文脈のなかで作られたものである以上、社会全体が能力主義という点で進展しているか否かを測る基準もまた文脈に依存するものであらざるをえないからである。たとえば、学歴やコミュニケーション能力は、いかなる社会でいかなる基準を使って評価するかに応じて、それが能力主義的であるかという判定は変わりうる。
このように筆者は、評価基準や評価の構造が能力そのものを事後的に作り出すとする「能力の社会的構成」論を主張し、シンプルで一次元的な従来の能力論を批判しながら、現代の私たちが社会的に作られた特定の能力を社会的に重要なものとして位置づけていると指摘する。(360字)

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