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2018年度 新潟大学 法学部 前期試験 小論文 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」 


 課題文によれば、挨拶を禁止するルールが定められた背景には、子どもが見知らぬ不審者との接触を避けることや、挨拶をしても他者から挨拶をされないという不快を回避したいという目的がある。こうした背景にもとづき挨拶を禁止するルールの設定が多数の者によって賛同されたことは、挨拶を通じた他者との接触を避けようとする傾向を持つ人々が現代社会における多数派であると分析することができる。それでは、挨拶を禁止するルールを定めることの是非について、どのように考えられるだろうか。
 私は挨拶を禁止するルールを定めることは、妥当ではないと考える。その理由は主として三点、考えられる。第一に、地域社会において、他者との接触を回避して生活することは、災害時などの対応の際に問題を引き起こすという危惧が挙げられる。たとえば、地震や火事などの災害時に近隣にはどのような人が居住しているか知らなければ、逃げ遅れた人の把握などに時間がかかり、救命活動が遅滞するという問題が生じることが考えられるからだ。したがって、阪神大震災や東日本大震災以降、緩やかであっても地域住民とのつながりを日頃から作っておくことが重要視されるようになった。
 第二に、挨拶が地域社会において安心して生活するための基盤となると考えるからである。隣人を知らなければ、未知の者がすべて不審者として疑わしい存在となり、生活において不安が増大する。したがって、少なくとも挨拶を行い、相互に顔や名前を知る程度に近隣住民を見知っている方が、地域社会において生活するうえで、未知の他者に対する不安や危機意識が緩和され、安心して生活することができると考える。
 第三に、挨拶による防犯効果が期待できるからである。挨拶には、近所や地域の住人との相互認知やコミュニケーションの機会をつくるなど、人と人とのつながりを深める効果が期待できる。その結果、周囲とつながることによって、自然と地域コミュニティが形成され、地域外の者に対するチェック機能がはたらくようになる。さらに、このチェック機能こそが空き巣などの犯罪抑止に効果を発揮すると考える。したがって、挨拶を行い、近隣住民と顔を見知っている関係を築いているだけでも、人の目が常にあることにより、防犯に対しても有効だと考える。(940字)





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