見出し画像

ソムニウム(72)スサノオの祠


美大の奥にある工房で
駐車場から車が飛び出すミニチュアセットを作ってる
先輩や同級生にほめられて嬉しい
車の名前はアルフェラッツだ
大講堂へ行くと講演会をしている
講師の一人が若い頃の父親
整形していて顔が違う
体育館が巨大な居酒屋になり
酔って力比べをしている もう一人の自分を見る
上半身裸でスキンヘッドで 背中と腕の筋肉が凄い
組み合ってる相手はもっと凄くて
人のかたちを突き破ってる

やぶれ やぶれ
かたちをやぶれ
はみだし あふれて
そとへでろ

バイクに乗って家へ帰り
山の斜面で夕日に輝く
数百の墓石の群れを見ながら
布団に入って明かりを消す
山の上で風に吹かれて
ぽつんと立ってる小さな祠が
シルエットで脳裏に浮かび上がる
空ではオリオンとシリウスが瞬く
毎日だんだん近づいてくる
回路がどんどん開いていく
尾てい骨の下に棲んでる蛇が
ずるりと起き出し背筋を昇る
今日は心臓の裏まで来た
頭へ登られ 脳を喰われたら
祠の中に入るのだ、と思う


(おわり)

長編小説は完結するまで、詩は100本書けるまで、無料公開しています。途中でサポートをもらえると嬉しくて筆が進みます☆