ソムニウム(66)微笑み
もうだめだ、と沈み込み
電車の座席でうなだれる
視線を感じて目を上げる
母親の背中で赤ちゃんが
にこにこ笑ってこっちを見てる
もうだめだ、と打ちひしがれて
広場の手すりに寄りかかる
野鳥が飛んできて肩にとまり
綺麗な声でさえずり出す
もうだめだ、と肩を落とし
神社への広い石段を上る
ふわふわしゅっ、と足首に
獣が体をこすりつける
白くて丸くて光るものが
湧き水の洞窟へ走って消える
もうだめだ、と思うとき
自分の皮が剥がれて落ちる
皮の下から出てきたものを
子供や獣の魂が見てほほえむ
(終わり)
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