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長瀬有花 LIVE "Eureka"に行ってきた

●はじめに
長瀬有花さんはリアルとバーチャルを行き来する”だつりょく系アーティスト”として活動されているミュージシャンだ。
先日恵比寿LIQUIDROOMで行われたはじめての有観客liveに足を運んで、すっかり心を鷲掴みにされてしまった。

実のところ、出会いは本当に最近で、それにもかかわらずliveに足を運んでみようと思ったのにはひとつ理由がある。
それは長瀬有花というアーティストの表現ひとつひとつにたくさんの豊かな”楽しみ”が溢れていたからだろう。

●インターネットを”楽しむ”こと
長瀬さんの表現は本当に多岐にわたり、私が最初に出会ったのは
liveの配信だった。

丁度リアルタイム配信中だったlive配信を観て
「面白いことをやっている人がいるなぁ」という印象を強く受けた。(まさか自分が大好きなKMNZとのコラボが後にあるとはつゆ知らず・・・)
インターネットでの活動を主軸とするヴァーチャル系のアーティストの中では正直、非常に特異に感じた。
ギターなど楽器の練習や弾き語りをしながら雑談する”長瀬有花を垂れ流す枠(仮)”、ちょいちょい現れる散文的な映像のイメージ(Vlog的な映像)

twitterにご本人があげている鳩の動画やカエルにliveの宣伝をする動画も非常にユニークで好きだ。
ヴェイパーウェイブ的なアプローチのある動画などもあったりと、長瀬有花という世界観に色々な表現からはいっていけるのもとても楽しい。
そしてなによりその色々な表現の根底にある音楽(楽曲)が本当に魅力に溢れている。ヴェイパーウェイブ・ポップス・エレクトロニカ・テクノ・オルタナティヴロック・クラブミュージック・みんなのうた・フレンチポップ・Lo-Fiなどなどオールディーズから先端までジャンルを縦横無尽に横断し、ゆるさと美しさ、そして時にエモーショナルで時にクールな世界観を堪能できる音楽になっている。

音楽・映像・・・長瀬有花という表現に触れるとインターネットという世界は、現代において様々な用途・目的・需要がある以前に、本来は面白い文化に触れたり楽しんだりするヴァーチャルな場所だったのではないだろうか?ということを思いだす。インターネットという粒子の粗い質感を持った異世界に足を踏み込んだときのわくわく感、そこでしか触れることのできないエモーショナルは確かにあったはずなのだとふと思った。

そんなわけで(どんなわけで?)
魅力的でユニークな長瀬さんの世界にひきこまれ
liveも何か楽しい予感がするということでチケットを購入した。

liveが近くなってくると↑のようなガイダンス動画がアップされ、これもまたとてもユニークな”表現”になっていることにさらに舌を巻く。本当に”楽しさ”という表現の豊かさを感じずにはいられない。

●表現することの楽しさ豊かさを体感したlive
前置きが長くなったが、このliveに強く感じたのは圧倒的な”表現すること面白さ、豊かさ、楽しさをダイレクトに伝えることの”の美しさだ。
最初の2曲で舞台上に投影されたバーチャルな長瀬有花はノイズと3Dのグリッド(ワイヤーフレーム)の歪みと共に消失し、その向こう側から現れたのは、バーチャルではなく現実の長瀬さんだった!?
音源だった伴奏は、そこから素晴らしいバンドの方々によってよりパワフルに楽器と電子のアンサンブルで表現される。
まずはただただその演出に素直に感情を揺さぶられる。
これもまた表現することの面白さに満ちている。
3曲目の途中で彼女は
「今日の楽しみ方は自由です! 拳を上げてもいい、手を振ってもいい、ゆらゆら揺れてもいい、ただじっと長瀬を見つめているだけでもいい。他の人と違うことを恐れないで。あなただけの楽しみ方を長瀬に見せてください!」
と呼びかける。
この瞬間「あっ・・・これはすごいな」とじんわりと感じ入り、鳥肌が立つ。
この言葉によって”表現”は観客にとっても作り手にとっても豊かな可能性、自由度を秘めていることを痛感させられる。
そこからは舞台の照明演出、映像演出、そして彼女特有世界観が持つやわらかさゆるさを保ちながらほぼほぼノンストップでラストまでパフォーマンスが繰り広げられる。
自分で書いていてもパラドックスであるとは思うが、ちゃんとゆるくて、ちゃんとまったりしてるのに、物凄い激しくて、パワフルで、エモーショナルで、幻想的で、美しく、そして何より”楽しさ”に溢れているのである。
アンコールなどはなくがっつり20曲を歌い切りさっそうと去っていく長瀬氏の姿はカッコいいとさえ思えた。
力強い表現はどんな結果をもたらすとしても本当に豊かであり、そして魅力で満ちているといこと。また”楽しみ”というものの大きさをたくさん感じることが出来る最高に素敵なliveだった。

配信でまだ観れるみたいなのでもし興味を持たれた方は一見の価値があると思う。

今後の活動もめちゃくちゃ楽しみなアーティストさんのliveでした!

余談ではあるが私自身、映像というメディアで表現し続けているプロの作り手として実はちょっと前まで少しスランプ気味だった。SNSやYoutubeなどいまでは色々な場所で作品を観てもらえる時代であり、それは私も自身の作品やお仕事の中でそういう機会に恵まれることは少なくない。とはいえ作品を作る、表現することは何をもたらすのかということを考えた上で現代はそれがはっきりと数字や目に見える評価として形になる時代であり、そこに対する悩み、疑念のようなものもあったりした。
しかし、文化的表現は何よりも豊かな”楽しさ”をもたらす魅力に満ちているということに気づかせてもらった気がするliveだった。
そういう意味でもこの出会いに感謝したい。

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