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初心者研修第2弾を開催!2021/7

こんにちは! PolicyGarage(愛称ポリガレ)企画広報チームの老月です。
PolicyGarageでは、新企画「ポリガレ・ブッククラブ」が始動しました!
行動経済学やデザイン思考に関する名著・最新著作を輪読し、学びを広く共有していきます。皆さんお楽しみに!

そこで2021年7月14日に開催したPolicyGarage研究会では、前回に引き続き初心者向けの内容としつつ、ブッククラブ第1弾ロングバージョンとして、ポリガレ講師の津田広和さんから、行動経済学者ケイティ・ミルクマン教授の『How to Change』をご紹介しました。「より良い行動をとる」ためにすぐに実践できる身近なアプローチや事例が盛りだくさんの本です。(邦訳が出る可能性大なのでその際はぜひ読んでみてくださいね!)
今回も90名を超える多くの方に参加いただき、皆さんが日々仕事で駆使している「セルフナッジ」を共有してもらうなど、大変盛り上がりました!

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以下、研究会の内容をご紹介していきます。

1.前回研修で扱った「3つのステップ」と「EASTモデル」の復習

まずは、前回の初心者研修で扱った内容の復習です。
ナッジを設計する上では以下の「3つのステップ」が基本となることを振り返りました。
 ステップ1 行動の特定:変えたい行動のプロセスを細かく分解する
 ステップ2 原因を分析:行動しない原因となっている「摩擦」要因を突き止める
 ステップ3 EASTモデル※に沿ってナッジを設計

〔※〕EAST Easy, Attractive, Social, Timely(簡単・魅力的・社会規範に訴える・最適のタイミング)の略で、ナッジを取り入れて望ましい行動を実現させるために欠かせない考え方。

前回は、ステップ3のEASTのうちEasyに着眼して、「デフォルト活用」「摩擦をとことん減らす」「アクセスを容易に!」という手法についてお話ししました。
今回は、EASTのうちTimelyに当てはまるアプローチを紹介していきますよ。

2.『How to Change』より、「摩擦」の克服法いろいろ

さてここから『How to Change』の内容に入っていきます。
本書では冒頭、「相手の弱みを的確に突く」という戦略を採用、世界一に上り詰めたテニスのアンドレ・アガシ選手の逸話が出てきます。「成功を妨げる要因を分析し、克服していく」ことの重要性が示されているわけですね。

ミルクマン教授は「成功を妨げる要因」を多数挙げていますが、今回の研究会ではそのうち、①「衝動」②「先延ばし」③「失念」に着目し、それらに有効なナッジのアプローチを紹介しました。

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①衝動

ここで突然ですが参加者の皆さんに次の質問をし、各自投票してもらいました。
Q1:今、チョコレートとフルーツ盛り合わせのどちらかをもらえるとしたら、どちらを選びますか?
Q2:来月の研究会のときにチョコレートとフルーツ盛り合わせのどちらかをもらえるとしたら、どちらを選びますか?

Q1の投票結果はチョコレート29%、フルーツ71%
Q2の投票結果はチョコレート21%、フルーツ79% となりました。

今は甘いものを食べたいのでチョコレートを選ぶけど、来月はより健康的なフルーツを選ぶという人が、(少し)いましたね。 
このクイズは、ミルクマン教授が「衝動」と呼ぶ傾向を皆さんがどのくらい持っているか?を調べるアンケートでした。
(ここで津田さんが想定したほどの差が出なかったのは、参加した皆さんにとって「フルーツ=健康に良いがついつい避けてしまうもの」というイメージではなかった可能性がありますね。アイスクリームor野菜スティックとか、ビールorトマトジュースといった選択肢だったらもっと結果がハッキリ出たかもしれません!)

この傾向は時間バイアスとも呼ばれるもので、「未来の自分は望ましい行動をとるだろう」と予想するが、いざ未来が来てみると、面倒になったり欲望に負けてしまったりして、結局望ましい行動をとらないというものです。
例えば、明日から早起きして勉強しようと決意するが実際には起きられない、ジムで体を鍛えようと年間パスを購入するものの結局通わない、といったもの。誰しも多少は覚えがありますよね。

これを克服するためには、自分を過信せず、つらいけどとるべき行動を「楽しい」ものに変えてしまうのがいちばん、とミルクマン教授は説きます。
本書では、著者自身の経験として、なかなかジムに行かずに好きな小説ばかり読んでしまうという行動を変えるために、ジムで運動中だけ小説を音声で聴くようにすると決めたところ、ジム通いが楽しくてたまらなくなった!という事例が紹介されています。

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この手法でネックとなるのは、本人が自発的に制約を守る必要があるということ。それができない場面ではどうしたらいいでしょうか?
一つの手が「ゲーム化」です。ウェブサイト運営に貢献してくれた人に☆(星)を進呈するとか、募金箱を地元の名産品の投票形式にして楽しみながらお金を入れてもらう、といったものです。このとき大事なのは、参加者が本心からゲームに参加するようにすること。やらされ感を持ってしまうと逆効果なので注意が必要です。

②「先延ばし」

続いては「先延ばし」の克服法です。長い目でみれば今やらなければいけない、と頭ではわかっているのについつい先延ばしにしてしまう。この「現在バイアス」も人間の性ですね。

ここで参加者の皆さんに質問をしました。「仕事を先延ばしにしないために、皆さんどんな工夫をしていますか?」
周囲に宣言する、タイマーを設定する、作業を細分化してリマインダーを設定する、一定の仕事を終えたら自分にごほうびをあげる、などなど・・・多種多様な回答がありました。皆さん色々な「セルフナッジ」を実践されていますね。

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皆さんの実践例にもあるように、「先延ばし」を攻略するには、自分を縛ることが有効です。本書でも、預金の引き出しに制限のある口座を提示されたグループでは預金額が80%も多くなったという実験例が挙げられています。
さらに行動にコミットするために、お金を掛けるという方法も有効です。また、周囲に宣言するだけでも自分の行動を制限することになります。こういった目標設定や宣言をサポートするアプリも数多くありますので、うまく活用できるといいですね。
いきなり大きな目標を掲げるのではなく、目標を小分けに設定して一つずつクリアしていくというのも有効ですよ。

③「失念」

最後に「失念」への対処法です。
米国の大統領選といった大事な選挙でも、多くの有権者が投票に行くことを忘れてしまうように、人間はどうしても物事を忘れてしまう生き物で、20分経つと半分のことを忘れてしまうとも言われています!

失念の対策としてよく使われるのがリマインドです。ただし、これは適切なタイミングで行うことが必須で、5分前にリマインドしても効果がない場合も・・・。リマインドされても忘れてしまうのが人間なのです。

そこでミルクマン教授がお薦めするのが、合図(キュー)です。必ずとる行動や必ずおこる事象と、とりたい行動をはじめからセットにしてしまうというものです。例えば、食事の時に薬を横に出して飲み忘れを防止する、クーポンを使うことを思い出してもらうためにレジ横に見慣れないマスコットを置いておく、など。

米国大統領選の例でいうと、投票日に何をした後に投票所に行く予定か、を事前に有権者の口から言ってもらうことで、本人にとっての投票のキューが設定され、投票率の向上につながったのだそうです。
ほかにも、ワクチン接種の予定日を手元の用紙に記入してもらうだけでも本人にとってのキュー設定となり、接種に行く率が上がったという例もあります。

さて合図(キュー)について理解ができてきたところで、ワークの時間です。「あなたの担当業務で、合図(キュー)と紐づけることで望ましい行動を習慣化することができる事例はありますか?」というテーマで、グループに分かれてアイデアをシェアしていただきました。

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・健診の日程を伝える際、そのままカレンダーに貼ってもらえるように、付箋に書いて渡す
・職場で最後の1つの文房具を使ったら「総務に連絡して」というメッセージが出るようにする
・テレワーク中、スタンディングデスクとステッパーを置いておいて自然と運動できるようにする
・電車に乗ったら本を読むと決める
・同僚や上司に、いつまでにこれをやりますと宣言して、その人自身にキューになってもらう(その人の顔を見るとタスクを思い出す)
といったアイデアが出ました!

普段から仕事や生活の知恵として合図(キュー)実践しているという方も多いのではないでしょうか。この記事を読んでいる皆さんも、ご自分や周囲の方と考えてみてくださいね。

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終わりに
今回の研究会では、「衝動」「先延ばし」「失念」という人間の性を攻略するアプローチをご紹介しました。参加された皆さん、お疲れさまでした。
前回はEASTモデルのうちEASY、今回はTIMELYに当てはまるアプローチを紹介しましたので、次回以降のポリガレ・ブッククラブでは「SOCIAL」に整理されるアプローチを紹介したいと思います。
お楽しみに!

今回ご紹介した書籍
『How to Change: The Science of Getting from Where You Are to Where You Want to Be』(英語)Katy Milkman 著


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

書き手/企画広報チーム 老月梓

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