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ナッジとデザイン研修(初心者編) 2021/6

こんにちは!PolicyGarage(愛称ポリガレ)の企画広報チームです。
2021年6月9日、ナッジとデザイン研修(初心者編)を、どなたでも参加できる形で初めて実施しました! 4月に開催したポリガレ設立記念イベントなどをきっかけに関心を寄せてくれた方々など、100人を超えるご参加をいただきました。

今回のテーマはずばり「明日から使えるナッジの基本」
ポリガレ講師は加藤優里さん、津田広和さん、志水新さんです。
まず「ナッジとは?」から、加藤さんが解説しました!

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ナッジ nudge のもともとの意味は「ひじでつつく」。人が「ついやってしまう行動」を利用し、ひじでそっとつつくように、望ましい行動を促す考え方、手法のことです。
従来の行政手法では、市民の行動変容を促す際、金銭的インセンティブ(補助や課税など)や強制(条例で禁じるなど)、ポスターやチラシで啓発、といったことを行ってきました。ナッジは、こうした金銭的インセンティブや強制力に頼らないのが特徴です。そのため、導入経費が低く済むので、費用対効果が高いとされています。

なぜナッジにそのような効果があるのか? そこで前提となる、ナッジが想定している人間像を確認しました。

従来の行政手法で想定されてきた人間像は、ある種スーパーマンのようなものでした。常に最高のパフォーマンスを発揮し、自力で最適な選択肢を選ぶことができる合理的な人間・・・
ナッジは、面倒なことはやらない、環境や周囲に行動が左右されるといった「現実的な人間像」を前提としています。そのため、的を射た行動変容が可能になるんです。

次に、ナッジの設計方法について津田さんが解説しました!

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ナッジを設計する上で「3つのステップ」が基本のき、となります。

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ステップ1!行動の特定
まず、変えたい行動のプロセスを細かく分解することが重要です。例えば、「税金の滞納」という行動を変えようとしても、その一行だけで分析することは難しい・・・「滞納」→「督促通知を受け取る、開封する、内容を理解する、お金を工面する」などなど、できるだけ細かく、行動のプロセスを洗い出します。

20210609‗ナッジ初心者向け研修(第29回ポリガレ研究会)

なぜこんなに行動のプロセスを重視するのかというと、人間の意図や態度と「実際の行動」には乖離があるためです。インテンション・アクションギャップと言うそうです! ナッジ設計では、実際の行動に着目し、その変容を重視します。

ステップ2!原因を分析

行動しない原因には「摩擦」要因があります。
行動変容を促すには、摩擦をできるだけなくすと共に、そのためのモチベーション(燃料)を十分に与えることが必要です。

例えば、滞納通知ひとつとっても、他の行政文書も大量に届いていたら、そもそも滞納通知に気付いていないために、滞納してしまっている可能性があります。そこでは、滞納通知を「大事な通知であると気づかせる」ことが滞納を解決する糸口であり、「通知に気づかない」という部分が摩擦になっているということです。

ステップ3!EASTモデルのE
ナッジ設計では、EASTモデルに当てはめて組み立てていきます。
今回はEASTのなかでもポイントをしぼり、E=EASYを中心に紹介しました。
例えば、先ほどの滞納通知で考えてみると、「通知に気づく」ができていない場合、フォントや色、文字の大きさを変えてみるというナッジが考えられます。

次に摩擦への対応を深掘りしました。
摩擦対応の極意は引き算ナッジ!「とことんシンプルな行政サービスのつくりかたを意識していきましょう」(津田さん)
今回は摩擦に対応するEASYに着目します。

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EASY1!
デフォルトは最強の摩擦キラーです。デフォルトの選択肢を最も望ましいものにしましょう。なぜなら多くの人は日々忙しく、わざわざデフォルトから変更しないからです。
EASY2!
ただ、デフォルトにできないこともあります。その場合は、望ましい行動の摩擦を減らしましょう。
EASY3!
望ましい行動へのアクセスを容易にしましょう。
例えば食堂で環境に優しい食事を選んでほしい場合、「メニューのトップに表示する」「目につきやすいところに配置する」といったナッジが考えられます。

津田さん「ビジネスでは、摩擦要因を徹底的になくすために非常にしのぎを削っています。例えば大手ネットショッピングサイトでは、ワンクリックすれば購入するシステムを構築しています」
「行政はそこから何を学ぶべきかというと、面倒なことをなくしていくことです。今はDXと言われていますが、そういうツールを使い、いかに住民目線のサービスをつくるかが求められています。それはナッジと一致するものです」
摩擦のない市民サービス!市民にとっても行政職員にとっても、待ち望まれますね。

ここで、実際のナッジ活用事例として、横浜市戸塚区と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの共同実証事業「ナッジ活用で固定資産税の口座振替申込者が倍増」を紹介しました。事業の詳細は下記のサイトでも確認できます。

研修では、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林庸平さんが解説して下さいました!
小林さんによると、口座振替の啓発チラシの第一印象は「文字が多い」「デフォルトがなく、何が自分にとって最適な選択肢なのか考えないといけない」というものだったとのこと。そこで、手続きの簡単さや、締め切り、支払い漏れが少なくなるといったピンポイントの情報を強調するチラシに変更。BIT(英国ナッジユニット)の助言も得て、掲載する情報をさらに絞り込んだそうです。

小林さん「文章なしで単語にしたのが1つの特徴です。BITとのやりとりでは、無駄を徹底的に省くという、EASTのなかでも簡素化を一番重視していると感じました。今回のチラシをもとに、いろいろな自治体でより良い事例が生まれればと思っています」

最後に志水さんから、デザインのいろはを解説しました!

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志水さん「今日覚えてほしいのはこの4つです。これがあれば、見やすく分かりやすいデザインになると思います」

PolicyGarage デザイン基礎

例えば、文章の行間の余白が少なくぎっちり並んでいると、読みづらいですよね。いわく「余白を恐れない心」が大切とのこと!

「デザイナーとして、人は読みたいものしか読まないし、見たいものしか見ないと感じている」と話す志水さん。何かを見てもらうとき、最初の5秒でどう伝わるデザインにするか、ということを考えるそうです。
 先ほど紹介した横浜市戸塚区の試作チラシを例に、「4つの魔法」を踏まえてどのようにデザインしていくか、ライブで作業しながら説明しました。
 目の前で、チラシがどんどん情報が伝わってくるデザインに変わっていく・・・! 鮮やかでしたね。参加者の皆さまからも「わかりやすい!」と非常に好評でした。

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皆さま、約2時間の研修お疲れさまでした!
ちなみに、本日登場した書籍はこちらになります↓↓

『シンプルな政府 ”規制“をいかにデザインするか』(NTT出版)
『いつも時間がないあなたに 欠乏の行動経済学』(早川書房)
『伝わるデザインの基本 よい資料をつくるためのレイアウトのルール』(技術評論社)

今回の研修はどなたでもご参加いただける形でしたが、その分短い時間にポイントをギュッとしぼりました。
自治体など向け研修は別途、時間や日程を組んでボリュームある内容を実施しています!

20210609‗ナッジ初心者向け研修(第29回ポリガレ研究会)

ご関心のある方、団体の皆さま、ぜひご相談お待ちしています! 最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。文責/企画広報チーム

20210609‗ナッジ初心者向け研修(第29回ポリガレ研究会) (1)


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