構造と表面展@駒込倉庫
8月の頭くらい。齋藤恵汰と堀崎剛志との二人展。駒込倉庫で週末のみ、14時から開始という展示。なんと、展示期間中は毎晩アーティストトークを開催するというもの。
齋藤恵汰の代表作『渋家』。実際の不動産を所有し、地図に署名するために登記簿謄本上の手続きを行った作品は、ゼンリンの白地図のみの展示であった。(価格表によると5万円。どこまでが販売範囲なのかは不明で、地図一枚なのか、署名をした行為なのか...。)
渋家は実際にアーティスト、エンジニアなどが住むシェアハウス。このシェアハウスを『オーナーチェンジ』として、作品としても販売している。住民は引き継ぎ、不動産の所有権移転の手続きも行う。士業とも連携し、こうした法律上の取り組みをアートとして解釈しているということ。
堀崎剛志のラテックスを使った作品。
齋藤の展示と比べると説明がなく、これは何か?というものが分からなかった。
アーティスト本人が在廊していたこともあり、様々な話をすることができた。大学卒業後、印旛沼で漆職人に師事。その後アメリカに渡りMFAを取得、そのまま17年間、ニューヨークで制作活動を続ける。8月の終わりまで一時帰国中ということだった。
堀崎さん:「何を見て、この展示に来ましたか?」
わたし:「あれ、えーと、なんだったっけ?不動産とアートの接続に興味がありました。」
こんな感じで始まったと思うのだけど、その後2時間くらい話し込む。
堀崎さんは、いろいろなコミュニティに入り込み、住民を巻き込んでそのコミュニティを象徴するような建物あるいは構造の一部、ベンチ、鴨居などに液状のラテックスを塗り、型取りする作品を作る。その作品をメディアと呼んでいる。作品作りにあたっては制作費の上限を決めており、必ずラテックスを使うこととしている。このラテックスの塗り方に、漆職人としてのスキルが活きているという。
コミュニティの思い、歴史、そうした象徴、思いのようなもの。それを魚拓のように取り出した。取り壊し前の空き家一軒丸ごとラテックスで型取りした作品もある。
横浜の築50年以上のマンション、塗り替え前にラテックスを使って型どり、色は建物に実際に塗られていたペンキが乖離したもの。
作品のストーリーをアーティストから直接聞いた後は、前と比べて作品に対する印象が変わった。
ソーシャリー・エンゲージド・アートなのかと質問をしたところ、アメリカでのSEAの定義付けに伴う弊害について話をしてくれた。公的な助成金を拠出する際に、SEAの定義を提示し、そこから逸脱する活動、作品については助成金の対象にならない。助成金のために作品作りをするわけではないとした動きもあるという。
ゼミの同級生がSEAを研究している。彼も加えて、後日夕食に出かけた。アーティストとの交流って、かなりの刺激になるのね。それを実感した。次はNYで食事ができるといいなと思う。
いただきましたサポートは美術館訪問や、研究のための書籍購入にあてます。