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広告と任天堂


あつまれ動物の森が注目されている。副業の顧客向けにレポートを書こうと思っていた内に、いろいろな記事が露出してしまったので、おざなりになっていた。digiday で記事が流れてきたので、整理しておきたい。

ゲームは既に産業化している。そしてゲーム・コンソールを製造・販売している会社や、ゲーム・ソフトを作っている会社だけではなくなった。eスポーツとしてプレイヤー側にも産業化(というか収益化)の動きがある。そこまで大掛かりでなくとも、YouTubeを使った実況配信など、収益を上げる方法はいくつかでてきた。

SEGAが先駆けだったと思うけど、ゲーム内に企業の商品を登場させる広告媒体としても実装がなされている。オンラインに繋がった今、ゲームの中の世界はオルタナティブ・スペースとして機能している。

今やブランドがゲームというカテゴリーに積極的な投資をするのは珍しいことでも、新しいことでもない。BMWはeスポーツが主要なマーケティング戦略を担うと公言し、すでにマーケティング予算を振り分けはじめている。F1(フォーミュラワン)は若いオーディエンスを育成するためeスポーツやバーチャルレースを活用し、成功を収めつつある。どちらも、若い世代とのコミュニケーションやエンゲージメント構築の手段としてゲームを位置付けている形だ。

新型コロナウイルスの感染拡大によってイベントや物理的なチャネルが失われた(あるいは著しく減少した)一方で、ゲームをプレイする人口や時間は増加した。プロ・スポーツやコンサートに掲載する予定だった広告と広告予算は行き場を失った。

「ゲームというチャネルあるいはプラットフォームの存在を再認識し、自分たちのマーケティング戦略においてどのような役割を担うことができるのか。今ブランドが再検討しない理由はないだろう」と、DIGIDAY[日本版]の取材に匿名で答えたある外資系ブランドのアジア圏プロモーション担当者は話す。

オンラインに繋がった今、コンソールの商圏とゲーム内の商圏の二つが出現したと思う。

「我々はパンデミック以前からゲームを分析し戦略を考え、実際にキャンペーンを展開してきた。GoogleやFacebookの上で安定するのも悪くないが、チャレンジを回避すべきではない」。

こうした時期こそチャレンジが大事。

人気のあるゲームがあるからコンソール商圏は成立する。そうしたゲームを熱心にプレイする人達のコンテキストに沿ったメッセージを届ければ、これほど広告効果が高い媒体はない。

4月に『フォートナイト(Fortnite)』内で開催された人気ラッパー、トラヴィス・スコットのライブイベントには、1230万人ものプレイヤーが同時接続したと発表された。「オーディエンスの規模はゲームによって異なるのは前提として、一度で1000万人以上の若くて新しいものに目がないオーディエンスにリーチする手段はそうそう存在しない」。

それぞれのコンテキストがバラバラなSNSの桁違いのオーディエンスよりも、同じ空気の1000万人の方が価値がある。


担当者が一例としてあげるのが、Nintendo Switchの人気タイトル『あつまれ どうぶつの森』でブランドがゲーム内コスチュームやアイテムの提供をおこなった事例だ。家具や服のデザインをプレイヤーが自由に制作しオンラインで配布できる「マイデザイン」機能を利用して、アパレルブランドを中心に多数のコラボレーションアイテムが登場した。ジェラート ピケ(gelato pique)やniko and…といった国内ブランドはもちろん、アナスイ(ANNA SUI)、ヴァレンティノ(Valentino)、マークジェイコブス(Marc Jacobs)などのグローバルブランドも参加している。


アバターのファッションに気が向いたという事。

『どうぶつの森』の場合、プレイヤーはゲームの中で自分らしく表現できるアイテムを求めている。

これはデモグラから、サイコグラフィックも明確なリーチとしている。

「家庭用ゲーム機やPCゲームのUIやUXは、当然ながら計算され尽くしている(されていないものもあるが)。ゲームの文脈に沿う形であればノイズもほぼないし、オーディエンスの印象はポジティブだ。行動の決定権をプレイヤーが握っているということは、裏を返せば常に最適な場所や時間にブランドに接触してもらえるとも言える。ある種のセーフティでプログラマティックな広告と言えるかもしれない。マークジェイコブズやヴァレンティノの売上が増加したかは定かではないが、少なくともプレイヤーたちは好意を持ってプロダクトやブランドを認知しただろう」。

ユーザーの属性収集とその販売を行うようになれば、任天堂はゲーム・メーカーからメディア企業に転換するかもしれない。そうした同意情報の収集はなかなか骨の折れる仕事だけれども、十分に収益化できるのではないだろうか。


ブランドの広告出稿先としてのゲームの分析は、まだまだ続くよう。


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