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【SB目線で観るモダンフットボール】20210925 Chelsea vs Manchester City

① 本日のサイドバック

皆さん、こんにちは。Polar Bear(ポーラ・ベア)です。


イングランド・プレミアリーグの毎節1試合、そして、その試合の、あるサイドバック(SB)の選手にフォーカスし、モダンフットボールをお伝えする本記事も、なんとか4試合目となりました。

これからも、”更新し続ける”ことを優先的に、ニッチな視点でお伝えしていければと。


さて、本題に入りますが、今回は、今節きってのビッグゲームである、現地時間2021年9月25日に開催されました、Chelsea vs Manchester City @Stanford Bridge の試合を分析していきます。


両チームには、素晴らしいSBがいるため、誰に注目するか決められないまま、試合が開始されましたが、悩みに悩んだ結果、今節での活躍も踏まえ、今回は、マンチェスターCのジョアン・カンセロ選手(以下「J.カンセロ」)にフォーカスしたいと思います。


前々回の記事で、同じマンチェスターCのK.ウォーカー選手にフォーカスしたため、短期間で同一チームから2人目の選出となりますが、ご理解いただければと思います。

前々回の記事:


②両チームの戦略と戦術

さて、J.カンセロについて述べる前に、両チームの戦略と戦術から振り返っていきます。

「戦略」と「戦術」は、似ているようで異なる言葉ですが、
本記事では、目的>戦略>戦術という概念で、「戦術=戦略を達成するための具体的な手段」という定義の元、両チームの戦略と戦術を解説していきます。

●フォーメーション:チェルシー:3-5-2 /マンチェスターC:4-3-3

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世界的なチーム同士の試合=選手だけでなく、”世界的な監督同士の戦い”となりますが、モダンフットボールの構造が非常に複雑になっている中、両監督の戦略&戦術を紐解こうとすると、まるでチェスの試合をしているかのように、緻密にポジショニングを練っているなと感じます。

もちろん、スタジアムでの観戦では、チャントを歌ったり、現場の熱気を味わうことができ、最高の体験ができますが、テレビ画面のアングルで、俯瞰して試合を観戦すると、このような戦略&戦術面を楽しむことができますよね。
(どのスポーツもそうやろうけど、サッカーも奥深い。。)


話を戻し、両チームの戦略&戦術を振り返ります。

もちろん、両チームとも、「目的=試合に勝つこと」であることは述べるまでもないですが、勝つためのアプローチ=”戦略”が異なり、その戦略を遂行するための”戦術”も異なりますので、まずはそこから。


●マンチェスターCの戦略:
ハイプレスとポゼッションを駆使した、ハーフコートゲーム

○戦術:
大外のレーンにSBとWGの2人配置し、相手WBを下げさせる

●チェルシーの戦略:
ハーフコートゲームを予期した上で、それをひっくり返すカウンター

○戦術:
3CMF+フィジカル面に優れた2トップという配置

両チームの戦略と戦術はこんな感じだったかなと分析しました。


この試合におけるマンチェスターCは、今シーズンよく見られる偽SBというポジションニングを意識的に採用せず、SBを開かせたままのポジションに配置し、大外のレーンにWGとSBを配置することで、相手WBが数的不利になる状況を作り出し、WBを敵陣に釘付けることを意識しておりました。

その結果、特に前半は、見事にハーフコートゲームという戦略を遂行できておりました。


一方、チェルシーは、3-4-2-1というフォーメーションの採用も予想されましたが、マンチェスターCが、ハイプレス&ポゼッションで押し込んでくることが分かっていたため、中央3レーンを優先的に防ぎ、失点をしないという主旨で、敢えて、3CMFを採用したと思います。

また、そうなると、相手は2CBを残し攻撃してくることも予期できたため、
ボール奪取後のカウンターアタックで得点できるよう、R.ルカクのパートナーに、K.ハヴェルツではなく、よりスピードに優れたT.ヴェルナーを起用してきました。

と、両チームの戦術&戦略も、これまた深いものであるため、どんどん長文になってきましたので、一旦この辺でストップ。。

イメージ図 ↓↓

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③J.カンセロのタスクとパフォーマンス

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前置きが長くなってしまいましたが、メイントピックである、J.カンセロの話をしていきます。

(マンチェスターCの公式twitterアカウントによると、彼がMOTMだったようですね。彼のパフォーマンスも下述の通り、素晴らしかったのですが、個人的には、Bシウバの活躍に心打たれました。。)


●J.カンセロのタスク(攻撃面):
大外のレーンで数的有利を作り出すポジショニング

こちらについては、上述の通りですが、チーム全体の戦略として、ハーフコートゲームを遂行するにあたり、この試合では、彼の代名詞である、「カンセロロール(偽SB)」のポジショニングではなく、純粋にサイドに幅をとることが、彼のタスクでした。

大外のJ.グリーリッシュにボールが渡った時に、スプリントをかけ、オーバーラップをするシーンも複数回見られましたし、大外で数的有利の状況を作るという彼のタスクを見事に遂行していたかと思います。


●J.カンセロのタスク(守備面):
ビルドアップを許さない、WBへのハイプレス

守備面においてシティは、3トップを相手3CBにぶつけ、相手WBに対しては、SBがマンマークするという、インテンシティの高いハイプレスを仕掛けておりました。

チェルシーは、R.ルカクというワールドクラスなポストプレイヤーがいますが、ビルドアップで下から繋ぐ意識も強く、そのビルドアップを許さない目的でのハイプレスです。

マンマーク気味に守備をしていたため、全選手に共通して言えることですが、マッチアップの相手に自由を与えないということが、彼のタスクであり、見事に遂行していたかと思います。


●J.カンセロのパフォーマンス 〜パサーとしての才能とオーバーラップの質〜

続いて、彼のパフォーマンスを振り返っていきたいと思います。


前提として、彼は右利きですが、この試合でも左SBで起用されており、「両サイドにおいて、パフォーマンスレベルが高い」という点を述べておきます。

世界中どこ探しても、この質の高さで両SBをこなせる選手は彼くらいではないでしょうか。


という前提を認識した上で、今回紹介したいのが、彼の「パサーとしての才能」と「オーバーラップの質」です。


〜パサーとしての才能〜

例えば、40分のシーン。

B.シウバのパスを胸でコントロールして、アウトサイドでアーリークロスをK.デ・ブライネに送るシーンですが、SBの選手で、アウトサイドでクロスを上げられるというセンスだけでなく、落ち着いてコントロールして、味方の動き出しを逃さないあたり。

パサーとしての才能が溢れております。。


続いて、47分(後半2分)のシーン。

左サイドの大外のレーンを、J.グリーリッシュと崩す場面で、何気ないJ.グリーリッシュへのスルーパスでポケットを取れておりますが、
ボールを持っても慌てない→顔を上げてボールを晒す→味方の動き出しを確認する→強度&コースともに質の高いパスを送る。という、こちらもパサーとしての才能が十分に詰まったシーンでした。


〜オーバーラップの質〜

60分と73分に見られた、J.グリーリッシュを追い越してから左足でクロスを上げたシーンに象徴されますが、彼のオーバーラップのタイミングと、その幅も素晴らしいものでした。

前回の記事で、マンチェスターUのL.ショーのオーバラップを紹介しましたが、J.カンセロも同じように、追い越す際の幅が絶妙でした。

サイドに幅を取りすぎると、クロスまでに時間がかかるため、縦へのスピードや推進力が落ちてしまいますが、適度な幅で、完璧なタイミングでスプリントかけておりましたので、チャンスにつながっておりました。

また、その後のパスの質。

利き足ではない左足にも関わらず、スピードのあるクロスであったため、両SBで起用される所以を見た気がしました。

前回記事:


④最後に

チェルシーvsマンチェスターCという、今シーズンのタイトル争いを占う試合を分析しましたが、両チームの戦略等を踏まえると、個人的には非常に見応えのある、手に汗を握るゲームでした。

(僭越ながら、中村憲剛さんの解説も非常に勉強なりましたし、面白かったです。)


今シーズンのこれまでのチェルシーを見ると、”上手い”だけなく、勝ち点を取り切る”強い”チームという印象であったため、そんなチェルシーにアウェイで勝利した、マンチェスターCは、これから勢いに乗るかもですね。



以上、今回も長々と書いてしまいましたが、SBの魅力が少しでも伝わり、
次回以降の観戦の際に、ちょっとだけSBを意識していただけたら幸いです。

ではまた次回。
皆さん、週明けもお仕事や学校など、それぞれ頑張りましょう!


※画像:
twitter @ChelseaFC(https://twitter.com/ChelseaFC)より引用
twitter @ManCity(https://twitter.com/ManCity)より引用

※TACTICAListaを使用
   





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