だいじょうぶ

体育の時間が大きらいだったの。
球技とか、大縄跳びとか、とにかく集団で何かをする競技が苦手で。
私のせいで負けちゃったらどうしようって思うと足がすくんで動けなくなってしまうの。
で、結局余計に失敗しちゃうんだよね。
そして更にきらいになるの。

運動会とか、球技大会とか
前の日はゆううつで仕方なかったの。
うまくボールを受け取れなかったり、縄に足を引っ掛けて記録を止めちゃったり。
かっこ悪いところばっかり、みんなに見られちゃうから。
実力テストの順位は公表されたりしないのにね。
ずるいよね。

もうね、体育のない国があれば、そこに生まれたかったなって思ってたよ。
多分そんな国はないんだけどね。
だから、早くオトナになりたいって思ってた。
私、長距離走だけは、好きだったんだ。
ほら、マラソンとか。
オトナになったら、自分だけのペースで黙々と走ればいいや、って思ってたの。

でも、ほんとにオトナになってみたら。
実はちっともそんなことなかったのね。
やっぱり色んなしがらみってあるし、チームやグループで仕事もしなくちゃなんないし。
すべてがうまくいかなくてゆううつな日もあるし、
投げ出したい日もあるし。
新しい一歩を踏み出そうとするとき。
ためらってためらって、
そのまま足がすくみそうになるのも、あの頃とちっとも変わらないの。

でも、みんなそうなんだよね。

だからね、
そんな時は、そっと背中を押して欲しいの。
私にしか聞こえない声でいいから、
「だいじょうぶ」って言って欲しいの。

うん。
だいじょうぶ。

私も、
あなたも。