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有給最終日

 今日で有給休暇が終わる。この1ヶ月何をしてたんだろう。何をしたら何かしたって思えるのか。会社を辞めると決めた2月には「台湾に行っておしゃな茶器で茶を飲むぞ」「青森でイギリストースト食うぞ」といろいろ計画を練っていたのに、新型コロナのおかげでこのざまである。どこにも行けない。友達とも会えない。仕事をしていないから新しい人間関係もない。自分が社会から忘れられた存在になりそうで不安だった。でも、まとまった時間で本を読むありがたみを知れたのは唯一よかった。

 記者をしていたときは、上司とか取材先から電話がいつ来るかわからないからせっかく買ったヘッドホンで音楽を聴かなかった。イヤホン片方とか。ベッドに入った後、窓の外から消防車とかパトカーの音がうっすら遠くで聞こえたら、無視できないから飛び出していく。これを怠ったからといって実際に大事件につながったことはなかったけど…。得るものは多かったけど、ずっと気が休まらなかった。常にあたふたしていた気がする。本は好きだから時間がある時には読んでいたけど、映像・音声メディアの楽さ(「ながら」ができるから、疲れているときもすんなり受け取れる)に流されて、学生時代より断然読む頻度は減った。書く仕事なのに、おいおい。

 打って変わって、やることがないので積読を消化する日々。途切れ途切れに読んでいた小説も、四畳の自室にこもり、一日かけて一気に読むと頭にすんなり入ってくる。世界観が途切れない。映画館の閉鎖的な空間で映画を観る良さに近いものを感じる(考えてみると、映画館ってすごい。映画しか見られない空間。気が散る日常から強制的に離れられる場所)。小説以外はPCにメモを取り、考えを整理しながら読み進める。読みっぱなしにしていると、時間が経つと内容がぼやけてきちゃって、なんとなくよかったなーで終わっちゃう。だから、読んだらせっせと読書メーターに感想を書く。読書家の人は普通かもしれないけど、私は心に余裕がないとできなかった。自分を見つめなおすというより、自分の時間を見つめなおす期間だったな。明日から新しい職場だ。他人との喋り方忘れてしまったよ。

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