できることを持ち寄って
私の実家は兼業農家で、田植えや稲刈りなどの繁忙期には、無口でいつもにこにこしているちょっと不思議なおじちゃんが必ずお手伝いに来ていました。
うちだけでなく、ご近所の農作業のお手伝いをしているようでした。
そのおじちゃんに知的障害があること、お兄さん夫婦と暮らしていて、近所の農作業を手伝ってお金をもらっていることを知ったのは大人になってからだったと思います。
そのことは関係なく、今私は発達症(知的障害・発達障害)のある方の支援をしていますが、そのおじちゃんの暮らし方をふと思い出して考えることがあります。
障害のある方に対して「生産性」について言われることがあります。
私はこの「生産性」がとても嫌いです。
何かを生産して、社会の役に立たないと生きる意味がないような考え方に思えるから。
誰だって、ただ生きてそこにいるだけでいいのです。
とは言え、社会の役に立ちたい、働きたいと思う当事者の方も多くいますし、少しでも自分にできることがあれば嬉しいと感じる気持ちは多くの方が持っていると思います。
だけど、意欲はあっても、環境の方が整っておらず、受け入れてくれる所やサポートがなく、社会で働きづらいことが多いです。
複雑な仕事が増えたのも、働きづらい要因の1つだと思います。
昔に比べて、デスクワークやパソコンを使う仕事、複雑で難しい仕事、1人で何でもしないといけない仕事が増えました。
仕事ってもっといろいろあるはずで、農業やものづくりなどで力を発揮できる人も多いと思います。
一方、日本は働き手が減っています。
今や海外から働きに来てもらって人材を補うようになっています。
だったら、障害のある方も働き手になれればいいのです。
障害のある方は、難しくて複雑な仕事はできないかもしれません。1つの仕事しかできないかもしれません。
でも、1つの仕事をする人がたくさん集まれば、いろいろな仕事ができます。
いろいろな人がいれば、お客様のしてほしいことにマッチするはずです。
《壁紙剥がし得意です!
リフォーム業者さんどうですか?》
《ひたすら紙を破ります!
個人情報シュレッダーします!》
《水大好きです!
水撒き、水やりします!》
一人一人ができることを持ち寄って仕事にする。
私の子どもの頃の近所のおじちゃんみたいに、できることで働く。
できる人にやってほしいことをお願いする。
そんな未来の実現を目指して、日々発達症の支援をしています。
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