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行方不明の潜水艇(2)

6月23日(金)
タイタニック号見学に出発したまま行方がわからなくなった潜水艇の捜索は、昨日も一日中進展はなく、手がかりは「海底から何か音が聞こえる」ことだけ。そのまま「酸素の供給が尽きる」とされた時刻を過ぎた。
私は前の晩と同じく「朝起きたら、奇跡的に潜水艇が見つかった」というニュースがあればいいなと思いながら(前日と比べて、もうあまり現実的ではないかもしれないとは思ったけれど)布団に入った。

夜が明けて目が覚めると「最悪の結果」が待っていた。

「海底からの音」も潜水艇とは関係なかったらしい。

結局、このツアーを主催した会社がいかにいいかげんだったかを非難する方に議論が向いていくようだ。

結局、この事故では何が起こっていたのだろう。

25万ドルの参加費用を考えると、大金をせしめるために
「タイタニック号」で釣って専門家ではない人まで誘い込む、
なかば詐欺のようなビジネスにも見える。
また、参加者はどのようにして「命にかかわる危険」より「冒険」を選んだのだろう。おそらく富裕層の多くは、どちらかというと「安全」を買うためにお金を惜しんではならないという価値観を持っていると思う。
海洋専門家たちが「自分ならこんな潜水艇には乗りたくない」と口々に言うのを聞いていると、情報収集の手段がなかったとは思えない(情報もまた、お金で買えるものだ)参加者たちがいったいどんな言葉で誘われたのか、
とても気になる。

どんな言葉で、どんな力関係が作用して、
彼らはその一線を飛び越えたのか。
もちろん、人類の歴史の中で多くの人たちが同様の一線を飛び越えてきた。
私たちの今の暮らしは、その上に成り立っている。
人間の本能の中に、その一線を飛び越えてみたいという欲求が
あるのだろう。
しかし、あなたもその1人になりたいでしょう?といって誘惑することもまた
きわめて拝金主義的なビジネスになり得るというのが、怖くもあり、
また現代を理解する上で興味深くもある。

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