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『エフィラは泳ぎ出せない』のススメ

「本よりもYouTubeの方が良いな」。

活字離れが増えていると言われている(どれくらい増えているのかわからん)この時勢、YouTubeの方が時間的にも節約できるし、本だと読み終えるまで数日かかる時もあるので非効率的なツールかもしれません。でも、世の中は全て効率的に進んでいるわけではないし、非効率(だと思われる)の中に重要なことが潜んでいることもあります。
人間関係も然り。人間関係に効率さを求めたらそう簡単に信頼関係作れるなんてありゃしませんの。

人間関係。
人との関わり、繋がり。
「信頼」も含めて、目に見えない形ばかりです。見えないからこそ全人類が悩むテーマの一つなのかも。
全人類とは言い過ぎですが、ほとんどの人が人生を生きる中で一度は悩むもの、煩悩に感じるものだと思います。

目には見えないものの、いろいろな形を見せる曲者のある人間関係をリアルに描き出した本はたくさんありますが、「障害者」と「障害者と関わる人」の心情をリアリティに書き出した新作が最近、出ました。

著者の五十嵐さんの本はこれまでにも出版されていて全作読みました。親がろう者というCODAの方です。

これから読む人と他に書評を書いている人に敬意を払い、私はあれこれと書くつもりはないですが、新作は小説で読みやすいタッチになっています。
そして、今の社会が捉える「障害者」について胸が締め付けられるほどの感覚を言葉で表現できていることに衝撃を受けました。本の冒頭にも触れている通り、子供の時に見た世界が大人になるにつれて変遷していくのは私たち自身が経験していることであり、目に見えていることが全てではないと再認識させられました。
極端な例で、子どもの時に会った親戚のおじちゃんに対して憧れと尊敬の想いを抱いていたのに何年か後に今まで知らなかった真実を知らされ、その想いがダークグレーになってしまうという。
人生を数年、数十年生きていればそんなこともあるわよ、と子どもの夢を奪ってしまいそうな現実があるからこそ、敢えてそれぞれの立場での心情を描いた本作に心を打たれるものがありました。

「障害者」がなぜ「障害者」なのか。
彼を支えている人は、なぜ、この私だけが支えている感覚になるのか。マジョリティが持つ特権に対しての抗う気持ちからくる行動なのか。
ふつふつと「なぜ」が出てきながらも、一つの答えを導き出そうとしている本でもあります。

読んでみようかなと思っていたらぜひ!

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